可愛い落とし物【いつ純】



※付き合ってる
お題「他の人と話さないで」





手を引っ張る力が強かった。
「いつき!おま、イタッ……」
「あ、すいません……」
ようやく手を離してくれた。掴まれていた手首は赤くなっている。いつきはそれをみてバツ悪そうに目を逸らした。いつもならもう少し心配して申し訳無さそうにするはずだが、こっちに非があることに対しては怒っているのでそれは出来ないといった感じだ。
「まあ、オレが悪かったよ。お前が心配してくれた気持ちを考えないでさ、あんな奴の誘いに乗って……」
とある番組で共演した男性タレントと二人に食事をしようとなった。オレは軽く了承してその日のうちに約束を取り付けられたのだが、それを知ったいつきがあまり良い噂を聞かないからと心配してくれたのだ。だがオレはそんなことないといって、約束当日にいってみたらお酒しか提供しない店だったのだ。未成年のオレがそんなところにいってもし週刊誌などに写真を撮られたら大問題になる。どう断ろうかと思っていたら、いつきが現れて何も言わずにオレを引っ張っていったのだった。
「アイドルが嫌いなんですよ、あの人。だからこんな嫌がらせを純哉くんにはしてきたんです……。というかその前に!」
自分の大きな背中を人が行き交う通りに向けて、オレの額にキスを落とした。
「なんで、誘われた時にオレにも声掛けてくれなかったんですか。純哉くんが知り合いじゃないほぼ初対面の人と二人きりで会って話すなんて……」
イヤですと小さな声がぽつりと今度は耳へと落ちた。
「……身長差が憎いことをさせるなよ」
オレはいつきの腕を引っ張って背伸びをしてお返しだと頬に口づけをしたのだった。 



20211019




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