言えない口癖【ひいあい】



※付き合ってないです。
お題【手を繋いだら好きになっちゃった!】



「この気持ちはどうしてなるんだろうか」
そんなことを突然言われて答えられる訳がない。顔が赤くなって、今にも爆発して逃げ出してしまいそうな衝動を頑張って抑えていた。
逃げ出そうにもここが観覧車の中だったからどうにかなったのだ。
「そ、そんなの……そんなの……」
なんて答えたらいいか分からない。分かってない感じの顔をしているが、本当にヒロくんは分かっていないのだろうか。本をおれより沢山読んでいるから概念は分かってるはずだし、文明が進んでいないらしい故郷でだってそういった話題はきっとあったと思うけど、知らないってことがないとは言い切れない。
黙ったまま赤くなっていると繋がれた藍良の手を自らの胸に当てた。ぬくい体温とドクンドクンとした心音がよく聞こえる。
「藍良と手を繋ぐと最近いつもこうなんだ。身体が熱くなって、心拍数が上がる。高揚感もあって、すごくいい気持ちもするし苦しい気持ちも少しある。これって病気なのだろうか?藍良はこういうのを知らないか」
何故事細かく伝えてしまうのと怒りそうになりながらも全く自分も同じ症状があるからなんとも言えない。
これをはっきりと言葉にしよう、説明しようなんてどう考えても野暮だ。
「し、知らないよ……おれだって……なんでも知っているわけじゃ、ないから」
精一杯に誤魔化した。自分の口癖のように言っていることを言えばいいだけの話なのに、今は出来ない。
「そうか……」
ヒロくんはしょんぼりと手を下ろして繋いでいた手を離そうとする。藍良はその手を自ら繋ぎ直した。
「あ、いや……離さないで……もう少しだけ繋いでよ」
俯いたままいうと、ヒロくんは嬉しそうに答えた。
「僕だってもう少し繋ぎたかったところだよ!」


20211018




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