知っていく【基緑】



※付き合ってない




今まで見たことがない顔をされた。ヒロトがそういうことをするなんて思ってなかったし少し前までみんな仲良く遊んでいたじゃないか。
「ヒロトじゃなくてグランと呼んでくれないか」
伸ばした手を振り払われた。もう一度ヒロトと呼ぼうとしたときにはもうヒロトはいなくなって、そして忘れていった。

レーゼになった最初の頃の記憶が曖昧なのは多分そのせいだろう。
 
「ヒロト、ゲームしない?ヒロトならうまいかなって」
緑川はスマホを渡した。最近流行っているリズムゲームのアプリだった。ヒロトはへえといいながら曲を選んでいく。
「緑川もこういうゲーム好きなんだ?」
「まー流行りのモノは知っておきたいかなって。あ、その曲にする?」
画面をみると昔小さい頃にみたアニメのOP曲だった。ヒロトはそうだねとスタートボタンを押した。
リズムに合わせてタップしていくのだが、一番簡単なコースを選んでいるのに上手くできずにヒロトはあれ?あれ?とびっくりしている。そのまま曲が終わってしまい、クリアとはならなかった。
「これ難しいね」
ヒロトがいうと緑川はふとレーゼの記憶が浮かんできた。
「ーーねえ、ヒロト」
「なんだい?」
きっとなんでも出来るとヒロトのことを思っていたし、ヒロトと仲良かったから父さんの計画が始まってもヒロトのことを理解していたつもりだった。
ヒロトがグランになってこちらを見なくなった瞬間に、何も知らなかったと思い知った。今だってヒロトがリズムゲーム下手なことを知った。
「ヒロトはリズムゲーム得意じゃないんだね。知らなかったよ」
緑川はあははと笑った。
知らないのなら今から知っていけばいい。今度振り払われても手をもう一度掴めるように、ヒロトと生きていく。



20211216




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