意味のない星【南倉】



※南沢2年、倉間1年の頃の話。自己設定あります。
お題【君が数えた星を探す】




「勝ち負けに意味はないよ」
初めて出会った頃、試合に勝った時にそう言っていた。初めはカッコいいことをいう人だと憧れを抱いた。憧れのサッカー強豪校である雷門中に入り、2軍からスタートでまだ先輩たちのことをよく知らなかった。
後に南沢さんがそう言った本当の意味を知り、それでも憧れを持ち続けた。
2年生に上がる前に1軍になり、南沢さんと2TOPのフォーメーションも増えて会話も増えた。会話が増えるたびに最初のイメージがどんどん崩されていく。カッコいい、ただそれだけではなくて諦めや憂いを身体に纏わせながらもボールを蹴っている。女の子にモテる理由も多分そういう雰囲気を感じってだからかもしれない。
「もうすぐ春が来ますね」
暗くなるのが段々と遅くなってきた頃だ。まだ少し明るい空で星が見えた。部活帰りになんとなく二人で駅まで歩いていた。
「おーそうだな」
「ああいう星って一番星っていうんですかね」
倉間がよく光って見えるオレンジ色の星を指差した。
「さあな、というか星ならあっちにもあるしもっとみればあの下に2つもある。一番星とは言えないんじゃないか?」
現実的で冷静な返しに思わず笑いそうになる。こういうのいってもこの人を好きな女の子は好きなのだろう。
「……南沢さんってほんとそのままというか面白みがないですよね」
倉間がいうと頭をグリグリと力任せに撫で回された。
「はっ!?な、やめてくださ……」
「面白くなくてもいいだろ、別に。サッカーも同じだ」
顔を上げると南沢さんは少し困った顔をしていた。同じとはきっと本当は思っていない。そう思わないといけないと自分に言い聞かせている。
オレもそうだから分かる。
「ーーーーでも面白くなくても、南沢さんと並んでサッカー出来るのはオレ好きっすよ」
倉間が思わず出た言葉に、数秒後自分で恥ずかしいことを言ったと気付き顔を真っ赤にすると、南沢はフフッと笑った。
「ここにいる星が一番よく見えるよ」




20211011




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