病室の一角にて聞いた独り言より



STOP実感


願っていたのはこんなんじゃない。何度いってもアレは止まってくれなかった。感触が苦しくて、逃げたいと思っても快感は一人で押さえられない。流される映像に心を奪われた。かすかにみえた嫉妬の影にあはははと高い声で私は笑う。聞いたこともないような吐き出す笑い声に胸が痛くなるばかりだ。ここには私しかいない。全て幻想で存在しない。アレが止まらない。水溜まりができて、池になって、海になった。慢性的な気持ち悪さに涙はようやく枯れた。次に出てきたのは花びらだ。サクラかな。触れるとスゥーと消える。明るい色に映像は変わっていく。元々茶色がかっててどう足掻いてもこうは染めることは出来ないといつも思ってた。ピンク色が重なり止まらない。海のように広がる液体と花びらの重みでそこが抜ける。ジェットコースターも驚きの急降下。まっすぐ落ちる。落ちる感覚が麻痺して空中にいることだけは足の下で分かった頃、ぬいぐるみが私の顔のすぐ前に立っていた。普段なら可愛いと思うキラキラした目をこんな目の前でみると、正直悪寒が止まらなかった。「帰るならあちら」ぐるりとぬいぐるみは体を左に向けた。ぬいぐるみの目先には青黒い扉。
出られる。そう感じた。私は出たかった。この不安定な場所より。重たい扉を両手で必死に引く。べとべとと纏わりつくペンキのような触りが手を覆った。もう何だと考えたくない。とにかくここは嫌。ようやく扉が開くと、あと少しの文字の看板と赤く染まった猛犬のような炎の道。歩け自分。痛点は消えた。感触も消えた。視覚も嗅覚も味覚も聴覚も何も感じない。ただ歩く意思のみそこにあり前に進んでいる。しばらくするとおめでとうと頭にメッセージが流れ込んだ。


目が覚めると私はベットの上で、それが分かると喜ばずにはいられなかったが、はてどう表現する。
悩んだ末に出した答えを言葉にした。

「あたしは自分の望みを叶えるために感覚がほしい」






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