恋人【蘭拓】



※別々の高校に進学後に付き合ってます!



 
会えると分かっていると、胸が高鳴るなんて知らなかった。あと少ししたら会えるのだ。昔はずっと一緒にいて、手を繋いで歩いても楽しいとか嬉しいとかしかなかった。今は違う。それに加えて期待がある。 
 
ただの旧知の友だった日から関係は変わってしまった。親友も超えた触れ合いに欲が出てきてしまう。
もっとしてほしい。もっと触って、肌を重ねて、日頃の煩わしさを飛ばしてしまうような、甘い刺激物を欲しがってしまう。
霧野は俺のことを考えているからか、ずっとキープしてある程度のラインで触ることをやめてしまう。満たされたはずが足りないと求めて手を伸ばせども霧野は首を横に振る。
どうしたらこのラインは超えることが出来るのだろうか。今の俺には分からなかった。
 
「お、神童早かったな」
スマートフォンをみていた霧野が声をかける前に神童に気付いた。見えてないはずなのにすごいなと感心してしまう。
「……今日は早めに授業が終わったんだ。霧野こそ早かっただろう。自転車だと3040分くらいかかるんじゃないのか?」
「まーお前が来ると分かったら飛ばしちゃうよな……」
あははと申し訳無さそうに笑っている。霧野も早く会いたかったのだろうか。そう思うと、余計にドキドキと胸がうるさい。
「神童?胸を押さえてどうした?具合悪いのか」
霧野の結んだ髪が肩から落ちて、こちらを心配そうに見ている。相手が好きだと分かると一つ一つが加速させる。もう早く触れてほしいなと神童は手を伸ばして、霧野の手を取り絡めた。
「……神童、ここ街中だから」
霧野は指を絡めなかったが、手を握った。
「あとでな、楽しみはもう少し先だ」
耳元で囁かれて顔が一気に真っ赤になった。
「はは、神童がそういう反応してくれるとオレも嬉しいし幸せだよ」
手を離して霧野は楽しそうに笑う。
「……こういうことに霧野が得意だなんて知らなかったな」
なんのこと?と霧野が本気なのかとぼけているのか分からないまま、二人は今日最初のデートの行き先へと歩き始めたのだった。


20211008




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