来ない日々を羨まない【創作男女】



※お題「タバコ吸わないで」



グッときて数秒後には落ちていき、桃色の日々が楽しかった。まるで夢のような日々が本当に夢のように終わってしまっただなんて。
「ねえ本当に私たちは出会って愛し合っていたかな」
泣き腫らした声で何度も確かめたあの頃が懐かしい。今は自分の指に鈍く光る指輪を貴方の前に晒せるまでになった。
今日も貴方の好きな煙草の銘柄のケースを置いていくけど、あっちではきっと違う銘柄を吸っているかな。
私の鼻をかすめるのは、死者へと届けと伸びる線香の香りだ。あの頃は毎日通ったから制服にこびりついてしまい、友人にも顔をしかめられたっけ。
「夢じゃないと思いたいから、また来るね」
制服ではない白いスカートを翻して私はそのお墓の前を去っていく。早くしないと夫に預けた我が子が泣いてしまう。私が好きすぎて居ないことが分かるとすぐに寂しがって泣いてしまうのだ。

目の前に広がる雲が多い空は、あの日々の青空にはならない。大切だった二度とない桃色の日々を私は忘れずに自分の人生を生きていく。





20211003




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