朝日のフラッシュバック【照吹】



※付き合って別れたあとの照美。
お題「愛した僕の負け」



 
一緒のベッドで寝起きして過ごした短い日々が嘘みたいに溶けて涙になる。涙が落ちるたびに愛しい記憶も流れていくのだ。
「ああ、好きだったんだな」
カーテンの隙間から見える朝の陽射しをぼんやりと眺めながら呟いた。決めたのは僕だし、彼は最初首を横に振っていたが最後は納得して縦に振った。
まるで僕がこの愛しき日々を降りたようで、降りたのは彼の方だ。僕は一緒に降りてまたどこかで、なんて言えなかった。
最初はどこか遠慮していたし風のように走る彼を僕は縛りたくなかった。そのはずが結局は何処へでも行くなと永遠に手を離さなくなるくらい好きだった。
好きだった、好きだったのに。愛しい彼を離すことを決めた。
彼がもし別れを受け入れずにいてくれたのなら、僕は今度こそ風を止めただろう。
大好きな彼の全てを一部壊してでも側にいさせた。
カーテンを開けると綺麗な青空が広がる。こんなに綺麗な空の下で走り、ボールを追うことはどんなに幸福なことだろう。
僕は負けたのだ、こんなにも君を愛してしまったから君を手放してしまった。
アフロディは髪をバサッと後ろに流した。寝癖のつかないきれいな髪は朝日に照らされて美しく反射する。
僕が決めたこと、彼も頷いたこと。
別れは永遠じゃなければ、きっといつか癒やすこともあるだろう。




20211001




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