笑えるように【奏と元ルーキー】



※アイドル目指すことやめた人の小話。
お題「夢も希望もあるんだよ」





女の子たちの黄色い悲鳴が上がったなとみると、テレビにディアドリが映っていた。きっとなにかの番組で悲鳴が上がるようなことをしたのだろう。
「あ、オーダーお願いしますー!」
「はーい!」
僕は早足で手を上げているお客の元へと急いだ。
 
ディアドリに憧れて、養成所へ通ってたことがある。ほんの一握りしかデビューの階段を上がることができないと知りながらも、昔見た天宮奏の光に触れたくなったからだ。養成所に通わずにレジェンドアイドルの三神さんにスカウトされて短期間にデビューした。調べれば調べるほどスゴイ奴だと思って、自分もそうなりたくてレッスンを重ねていた。
ある日、偶然天宮奏に現場であった。彼はどんな人にも優しくて明るくみんなを笑顔にさせていた。
その晩、興奮で眠れなくて結局1時間しか寝ることが出来なかったが起きた瞬間に心臓の音がうるさかった。
 
その時に見た夢が、天宮奏の隣でステージに立って歌って踊っていた。自分は全然踊れず、みんながみんな天宮奏をみた。誰も自分を見ていないのだ。
と、天宮奏が僕の方を向いた。
「まだまだイケるよね?」
満面の笑みに僕は泣きたくなった。
無理だ。僕には。ごめんなさいと泣いていたら目が覚めたのだ。
 
 
ディアドリや彼を見るたびに思い出すのだ。
自分の情けなさや無力さ、それでも見てみたかった夢の舞台を僕は逃げ出したと。
居酒屋のガヤガヤさの中、自分は落ち着いている。笑顔でいられるのだ。
僕はここがきっと自分のステージだったのだろう。


20210930





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