寂しくない月【奏純】



※付き合ってないデビュー何年後かの二人。
お題「月夜のお供に」





 
「綺麗なまあるい月だね!」
「そうだな」
時間が空いているときいた奏は久々に走り込みしようと誘ってきた。デビュー前後はやっていた夜の走り込みをそういえば最近していなかった。
お互いに忙しいし、朝から仕事が入っていて時間が取れなかった。
1時間走り、いつもの公園で休憩していると奏がみてみてと袖を引っ張って指をさした先にはビルとビルの隙間から月が見えていた。
そうかそろそろ満月なんだなと思っていたが、奏はニコニコとこちらをみてくる。
「……なんだよ」
「え、いや今日は一緒に見れたなー!って!最近は一人で帰ることが多いから綺麗だなと思っても少し寂しくなっちゃうんだよね。前まで毎日毎日一緒たったのに」
あーあーと奏は足をぶらつかせた。
奏の気持ちは分からなくもない。あの頃のがむしゃらにみんなで一つのものを勝ち取るために走っていた日々は紛れもなく楽しかったのだから、その分寂しくもなるだろう。しかし、純哉は寂しいとは言えないのだ。
「オレは寂しくないけどな、お前らが毎日毎日頑張っているからそんな時もあると思えるから。デビューしたての頃のファンミ覚えているか?」
「もっちろん!」
「あの時、久々に5人でやるぞ!ってなったときに息が合わなかっただろ。久々ってのもあったけど、一人一人が自分のことで精一杯だったからだと思う。だけど、この前のファンミは最初の打ち合わせから違ったよな」
「うん!息が合ってた!」
オレが言いたいことがだんだん分かってきたようで、頷くスピードも早い。
「たまに5人での仕事でもどう合わせるかが互いに分かってきたんだよ。昔からの癖も知ってるし、ここは奏は出たいからオレは引いてみるとか。言わなくても出来るようになった。なんかそれって嬉しくないか?」
奏は大きく頷いて純哉の手を取った。
「めちゃくちゃ嬉しい!!わかってくれた!ってなる!そっか……寂しいだけじゃなかったんだね!」
「あ、ああ……だから寂しいなんて思わない」
奏は純哉の手を離して立ち上がり背伸びをした。
「じゃ、そろそろ再開しよっか!」
ああと純哉がいうと奏は先に走り出した。 
分かることと分からないことも実はあるんだけどなと思いながらも純哉も後を追った。




20210929





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