空想の音【創作BL】



※歳の離れた兄と弟の話。
お題「一緒にお風呂入ろう」





自分から出る息の音や身体の軋み、服の擦れなどを最大限に注意してそっと開いた脱衣所から漏れる声や音を聞くのが密かな楽しみだった。
機嫌が良ければ鼻歌を歌いながらシャワーを浴びて身体を洗っていたり、そっと足をお湯に入れていき、肩まで浸かったときにフーと漏れる声にドギマギした。普通ならこんなことをしないのだろう。ましてや同性である弟に対して。
小さい頃は一緒に入っていた。その時は何も感じなかったし、そこにいる弟が無邪気で可愛いと思っていた。オレが中学生になった頃にはもう弟も一人では入れたし、一緒に入るかとはならなかった。
そして、この危なげな趣味はオレが大学生から始めてしまった。
週末や長期休みの時に実家に戻ったとき、してしまう。
ただ音を聞いて、ただ空想を広げて楽しむ。それだけだ。
 
ポチャンと聞こえた。そろそろ上がるのだろうかとオレはゆっくりと後退りをしていくと、弟の声がきこえてきた。
「一緒に入りたいなーー」
独り言だろうか?それでも脱衣所に戻ったら見つかってしまうので戸をゆっくり締めているとまた聞こえてきた。
「お兄ちゃん……グスッ……」
弟は泣いている。そのことにビックリして、戸を締めていた手がズルっと滑った。あ、まずい!と思ったがどうにもできない。
バタンと大きな音を立ててオレは顎を床にぶつけた。
「う、うう……」
口の中が血の味がする。どうやら少し切れたようだ。
と、目の前にポタリと水滴が落ちた。
「ねえお兄ちゃん、なにしてるの?」
見上げたら弟がいい笑顔で、それも全裸でオレをみていた。
あまりの驚きと目の前の弟への申し訳無さとこの場をどうしたら良いかと考えて電池が切れたかのように何も言えずにいると、弟はオレに手を差し出した。
「お兄ちゃん、そんなに見たいなら一緒に入ろうよ?お風呂」




20210928




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