キスしても解けない【蘭拓】



※付き合ってますね
お題「呪ってでもそばにいる」



 
そばにいて欲しいだなんて今更すぎて言えない。今までだって側にいたじゃないかと言われたらそれまでだが、今までと同じようにそばにいてほしいわけじゃないんだ。
幼馴染だからだとかなんとなく昔から習慣で、じゃなくて傍に居たいからいる、霧野がそうしたいからそうしていると思っていてほしい。
別々の進路先になると分かったときに、『そうか……お互い頑張ろうな』と言われたときにあの時は頷いてしまったが後で後悔した。
自分から離してしまった手をもう一度繋がせてほしい。

「神童、オレは本当は情けない奴で、本当は呪ってでもそばにいるからと言い放ちたいくらいだ。そんなこと、オレが神童に出来るはずがないのに」
日の沈んだ薄暗がりの部屋でキスをしながらそんなことを言う。互いの顔がぼんやりとしてみえている中、悲しそうな声はスッと胸の奥まで落ちていく。
「……呪っても良かったのだが」
神童が呟くと口は塞がれて、それは出来ないと首を振られた。
「オレは願うことが出来ない、きっとその資格すらないんだ」
資格ってなんだよ、オレの口を塞ぐ資格はあるのにと言ってやりたいが、霧野はまたもや首を振るだろう。きっと霧野自身の問題でオレには解くことができない。
せめて今だけはと今度は神童から唇に触れたのだった。




20210919




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