カッコつけ【奏純】



※数年付き合ってる。
お題「知ってるよって嘘つきました、何も知りませんでした。」




「知ってるよ」
奏はキスをして囁いた。何を知っているのだろうか、やめろと抵抗しても奏の馬鹿力に敵わない。
誰が来るかもわからない控え室で、鍵をかけたのか分からなくて汗が止まらないし謎の緊張感で心臓が痛くなる。
「ん、アッ……奏やめろ」
呼吸する代わりに吐いた言葉はすぐに食べられてまた息が出来なくなる。声を抑えるのにも大変なのに、どうして今日はそんなに余裕がないんだ。
トントンとドアをノックする音が聞こえた。
「純哉さーん?少しよろしいですか?」
マズイと入り込んでいた奏の舌を少し噛んで返事をした。
「ーー少し10分程待って下さいー!今立て込んでて……」
奏の口を手で押さえて睨みつけた。この状況で入られてもまずい。瞬時に考えた言い訳をツッコまれたらどうしようかと言ったあとに後悔した。うまい言い訳も嘘もこういう時すぐ出てこない。
スタッフは特に気にせず、分かりましたとパタパタと去る足音がした。
きっと他の準備もあったからだろう。安心していると手を叩かれた。
「……純哉くん」
「ああ、ワリィ……」
手を離すと今度は我慢していたように奏は純哉を抱き締めた。さっきまでしていた感情をぶつけるようなキスではなく、すごく愛おしくなるような寂しそうに強く抱きしめてくる。
「ごめんね、純哉くん。オレ、オレは……!」
「うんうん、知ってるから。泣くなよ奏」
自分より少し背の高い頭を撫でながら慰める。同い年なのに年下のようにたまに甘えてくる奏がなんだかんだで好きで独占したいけれど、そんな気持ちはもう隠してしまった。
それが奏をもしかしたら苦しめていたかもしれない。
奏が初めてキスシーンがあるドラマに出演したことをオレが知った時、おそらく思っていた反応と違ってしまい喧嘩になった。
喧嘩なんてよくあるからと素っ気ない態度で過ごしていたら、奏が今日
になってここにきた。どうやら今日がそのキスシーンの放送日らしく、それを伝えに来たのだ。
ただ、じゃあ見るよと答えると無理矢理キスしてきた。

 
「一緒に見たら満足するか?」
純哉がいうとわかんないと小声で呟いた。
「オレはお前が満足すると思うからさ、信じて仕事に戻れよ」
うんと頷いて奏は腕を下ろした。早くしないと先程のスタッフが戻ってしまうので早く戻れと背中を押してドアの前まで誘導した。
奏がドアノブに手をかけ止まって急に振り返って微笑んだ。
「純哉くんはさ、ほんと格好いいよね」
じゃあまたと奏は楽屋を出ていった。
「……格好良くいたいんだよ。好きなヤツの前では」
赤くなってしまった顔をパタパタと手で仰いで冷やしたのだった。



20210912




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