知らないキス【大人円冬】



※夫婦になってます。
お題「目覚めのキスをして」




また海外に行ってしまったなあ。
仕事が終わって家に戻り、部屋の明かりをつけた瞬間に思ってしまう。今回は急だったから今日の夜は待っていても誰も帰っては来ない。
こんな日は少し手を抜いて食べてみたかったお惣菜屋のおかずをいくつか買ってきた。それをお皿に並べて温めている間に、チューハイを1つ冷蔵庫から手にとってグラスに注いだ。綺麗なオレンジ色をしたお酒に少しテンションが上がる。温めたおかず達をテーブルに並べていただきますと手を合わせた。
一口食べて美味しいと思いながらお酒を飲みながら、つけていたテレビに目を向けた。
テレビでは《思い出のあの人に会おう!》というよくある番組が流れていた。
「そういえば、私も会えたんだなあ」
サッカーのマモルくんに再会して、歳を重ねていつの間にか同じ屋根の下で暮らしている。
私はふと左手の薬指に目を向けた。照明によって動かすとキラッと光る。まだ少し慣れず指輪を見る度に少しニヤけてしまう。きっとこんな気持ちも生まれてこなかった。こそばゆく愛おしい気持ちをあの頃からきっと少しずつ育っていったのだ。
あの時の再会が眠っていた別の自分を目覚めさせてくれた気がする。
白雪姫の目覚めのキスみたいだなとクスクスと笑っていたらブーブーとスマートフォンが震えていた。
画面を見てグッドタイミングだとすぐに電話に出た。
「もしもしマモルくん?」




20210908




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