いつまでもファン【 いつ純 】



※2期より何年後かの話。付き合ってない
お題【真面目にやってれば報われる?君のこと真面目に想ってるよ】



ああ好きだ、と思ったのと同時に、
ああ駄目だ、と悲しくなってしまうことを繰り返している。
追いかけてきた背中と並び熱くて眩しいスポットライトを浴びて、この上なく幸せなはずなのにどこかで自分は嘆いている。
その僅かな欠片は目に留まりやすい。
ディアドリで集まって次のライブのことを話し合おうとなって、いつきが一番乗りで会議室に入った。と、後ろからポンと肩を叩かれた。
「早いな、いつき」
「前の仕事が早く終わったもんで……純哉くんこそ、まだ集合1時間前ですよ」
「オレも早めに切り上げたわ。久々にこうして集まって話せるの嬉しくてな」
部屋の中央にあるテーブルを挟んで純哉はホワイトボード側、いつきは反対側に座った。リーダーである純哉はホワイトボードに書き込むことが多い為、大体いつも通りだ。
純哉は座ると持ってきていた資料をテーブルの上へと広げていく。今度のライブはドリフェス!と同じくらい大きな規模のライブだ。ディアドリが主体で何組かルーキークラスの子も歌える場を与えたいと考えている。夢の大きさを改めて知ってほしいと純哉からの意見だった。
「……純哉くんはどうして今回まだデビューが決まっていないルーキークラスの子を大きなステージで歌わせようと思ったんですか?」
「意外か?」
純哉は鼻で笑う。いつきはそうですねと頷いた。
「純哉くんならデビューが決まってもいない子たちにそんな大きな舞台勿体ないといいそうですし……その……ーー今のルーキーの子たちって」
言葉に詰まると純哉はいつきを指差した。
「やる気がないってか?まあ無理もないけどな、ここ数年ルーキーからデビューが決まってないっていう状況だし」
ルーキーたちと話したりレッスンしているところみていると、思うことがある。自分たち、特に純哉に関しては何がなんでもデビューするという気迫が人一倍あった。レッスン後も自主練している姿をよく目にしていた。
だからこそ、今のやる気のない子たちを純哉がどうにかしようとしているのが気になってしまう。
「オレだってやる気が無いならそれまででいいと思うんだ。そんなんじゃ例えデビューしてもすぐ辞めてしまうだろうし……。だけどな、オレがデビューしてからよく思うのはオレが頑張ったからじゃなくてオレを応援してくれたファンのおかげなんだ。そのファンにはデビューからの子もいるし、中にはルーキー時代からのファンもいる。ルーキーたちにも誰のために自分は頑張っているのか、ステージに上がるのか今一度考えてほしいから今回立たせるんだよ」
どこか遠くを見つめながら、そう語る純哉は格好良かった。
それはこれまで必死に努力してきた日々をどこか報われてほしいと思っている想いもあるのだろう。
報われてほしいと願うのはいつきも同じだった。
「……純哉くんは凄いですね。だからーーーー」
好きになってしまう。そしてその想いは伝えたくないと口を閉じる。
「だから、ファンになってしまうんですよ」
いつきがそう続けて言うと、純哉は照れくさそうに顔を背けてありがとと小さく呟いた。




20210903




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