分からないけど、【ひいあい】



※付き合ってない。モブファン出てくる。


 

「あ!ALKALOIDだ!」 
休日にアイドルグッズを買いに街に出ていると、そんな声にびっくりして振り返った。見ると明らかに自分と同じアイドル好きの女の子たちが街頭ビジョンに流れていた映像を眺めていた。
藍良が見たときには既に別のCMが流れていたが、おそらくスタプロ所属のアイドルの宣伝映像だろう。いつだったかに衣装を着て撮ってもらった覚えがある。自分たちはまだ新人なので、流れるか分からないとのことだったが後日出来上がった映像を見てメンバー全員で喜んだっけ。
少し後ろに藍良がいることにも気付かずに女の子たちはまだ喋っている。
ドキドキとしながらこっそりと会話を耳を立ててしまう。
「ALKALOIDって新人の?あのトランプのマークがそれぞれトレードマークみたいな」
「そうそう!最近私、その中でも一彩くん推してるんだーー!なんか本当にアイドルのこと何も分かってないみたいなんだけど、だからこそまっすぐにアイドルに対して向き合ってるって感じでさー!」
藍良はうんうんと頷いているとその子達が待っていた信号が赤から青に変わってその子達の会話はそこまでしか聞けなかった。
自分の所属するユニットやメンバーがファンに褒められるのは素直に嬉しい。今だって声を掛けてありがとうって伝えたい。
しかし、なんか胸のあたりが居心地悪いのだ。一彩を推してる、と言われてズキズキと痛くなっていく。
自分よりアイドル歴が短い一彩に対しての嫉妬なのか、それともその子が一彩を特別に見ているという……ものなのか。
「……今日は帰ろうかな」 
藍良はくるっと180度回れ右をして、その子達と反対方向へと歩き出した。
たまにくるこの一彩に対しての感情が自分でよく分からない。
悔しさも混じり、何かもっと嫌な感じもある……やつ。
 
急に晴れていた空が曇り出した。灰色に包まれていく中を藍良は少し駆け足になる。
「ヒロくんはおれが一番知ってるはずなのに」
ポツポツと肩に落ちる冷たさを振り切るように早く早くと足が速くなっていく。
他の誰かに一彩のことを言われて、嫌だなんて心が狭すぎる。
なんなんだろう、これ。
寮につく頃には、ゼイゼイと息が上がり最後は全力疾走になっていた。
「おや、藍良!おかえり……っと大丈夫?雨降ってきたから?」
「ん……まあそんなもの」
一彩の顔を帰って早々見られて良かったと藍良はホッとしたのだった。



 


20210902




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