風物詩は来年も【蘭拓】






※付き合ってない





夏休みの課題が終わらないと嘆いている後輩たちに気付かれないようにとこっそり霧野と神童は帰っていく。
「手伝わなくてよかったのか?」
「……神童は頼まれたら注意しながらも最終的に手伝うだろ。そうしたらオレも手伝うことになるし……。夏休みの風物詩だからさ」
あははと乾いた笑いが出る。実は霧野自身もまだ終わっていないのだ。だから後輩に神童を取られるのは少し困る。
「今日オレの家にくるだろ、神童」
「ああ。一旦家に帰ってから向かうよ……去年みたく夏休みの課題は手伝わないからな」
バレていた。そもそものこの夏休みの終わりにうちの家で手持ち花火をする流れは、小学校の頃夏休みの宿題を手伝ってくれたお礼として誘ったのがきっかけだ。
「すまない、神童……実は……」
「終わってないんだな霧野……今年も……」
ものすごく申し訳ない気持ちでいると、フフッと神童から笑う声がきこえてきた。
「いいよ、これも夏の風物詩だろ?花火も含めて楽しむよ」
ああ、やっぱり。神童は断わらない。だからこそ不安になってしまう。
これからも神童の隣に居られるのか。来年の夏の終わりも風物詩を楽しめるのか。
「来年こそちゃんと終わらせるさ」
曖昧な気持ちは夏終わりの陽に大きな揺れたのだった。





20210831




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