少しだけの眠り【照吹】





※多分付き合ってます。前半子ども照吹、後半大人照吹です。




重い瞼をゆっくり開けてみると金色の糸のようなものが視界に入った。なんだろうかとぼやけていた頭がどんどんと解っていく。
金色の髪をして綺麗な顔をした美しい人が隣で眠っていた。
「え、わっ!?」
驚いて飛び起きると、その人も目を覚まして身体を起こした。
「んーもう少し眠っていようよ。まだ明るくないし」
そう言って僕の腕を強い力で引っ張って身体を抱き締められた。無理に離れようとしても強い力の前では敵わない。仕方ないので胸をドンドンと叩いて抵抗する。何故か何か言おうとしても声にならずにただ口をパクパクとさせていた。
「うんうん、そうだねえ。びっくりしたよね」
その人は吹雪の頭を優しく撫でた。するとパニクっていた気持ちと恐怖心が不思議と落ち着いていく。この人は誰なのか、それすらも分からないのにとても安心してしまう。
まだ眠いのか瞼が閉じようとする。ここで寝てしまっては良くない。必死に目をこじ開けている。
「いいんだよ、少し休もうよ。大丈夫、君は間に合うからね。さあ寝ようか」
静かに落ちてくる声に寝てはいけないという理性がだんだんと削れていく。
ああ、駄目だ。ほんの少し、目を閉じるだけ。
吹雪はそう決めて瞼を閉じていった。
 
 
 
ーー目覚めると白い天井が見えた。
「あ、目を覚ましたんだね」
ベッドの横にいたアフロディが気付いて声を掛けた。
「あれ僕なんで……」
考えようとするとギンと頭が痛くなる。
「軽症の熱中症らしいから横になってていいよ」
「うん、ごめん。そうさせてもらう」
吹雪は再び横になってアフロディの方を見た。アフロディは安心した表情を見せている。心配させてしまったなと申し訳なくなった。
「無理し過ぎだよ。ここんとこ調子が上がらないのも分かるけれど、身体を壊したら意味がないよ」
「うん、そうだよね。分かってはいたんだけど、少しでも休むと何してるのか、こんなことしてていいのかって考えてしまうんだよ」
吹雪は手を伸ばしてアフロディの手に触れた。するとアフロディはその手を握ってくれた。
「君に追いつきたかった……。僕も世界で戦いたい」
言えてなかった本音がつい出てしまう。アフロディは強く吹雪の手を握った。
「追いつくさ、君は。そう願うのなら。僕はもう神様ではないけど分かるよ」
「久々だね、それ」
吹雪がクスクスと笑うと、アフロディも嬉しそうな顔を見せたのだった。







20210825




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