寂しいから早足になる【蘭拓】





※高校が違う神童と霧野設定。付き合ってないです
お題「指輪なくしてしまった」





一人で帰る道に慣れたのはいつぐらいからだろうか。高校が離れて一緒に帰ることもなくなり、約束せずとも毎日会っていたのに今では約束がないと会うことがほぼない。
会いたいと思う日々をこんなに毎日ふとした瞬間に思うとは想像できていなかった。
学校と寮との15分の距離が1時間かかるくらい長く感じて、霧野と帰ったあの道は30分の距離は5分くらい短く思える。霧野は知っていたのだろうか。オレがこんな風に寂しくなるだろうと持たせてくれたのだろうか。
手の甲へとちらりと見てため息が出る。
断ったことを今更後悔してしまう。お守りみたいなものだよと持たせたものはオレは身につけることが出来なかった。
「お守りだよ、オレはこれから毎日側にいてやれないから。身につけていてくれたらオレが安心するんだ」
霧野は情けなさそうにお願いをした。オレは受け取ったものの部屋の机の引き出しにしまっている。あれをつけたらきっと寂しくなくなるのかもしれない。1時間が元の15分に戻るのかもしれない。
しかし、今のこの感情をどうにか良くしたいと思っていないのだ。
寂しいし悲しいし、それに恋しい。
と、斜め前にいたカラスが鳴いて上空へ飛び夕日へと帰っていく。
「また、電話してもいいかな霧野」
オレは見えてきた今帰るべき寮に少しだけ早足で向かっていった。





20210815






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