※付き合ってまーす!
お題「君の隣は空いてますか?」
「緑川、好きだよ」
何度も言ってくれた言葉がオレを前へと歩かせた。暑い夏の日、今はどうしているのだろうかと青い空を見上げて、きっと元気に前を向いているだろうと思ってしまう。
諦めるのは簡単だった。そのはずが諦めることは出来なくて苦しくても悲しくてもオレは辿り着きたい場所のためにガムシャラにやるしかなかった。
もっと効率のいいやり方があったかもしれない。だけどオレは頑張ることをひたすらした。ちょっと遠回りだったかもしれない。でもヒロトはそんなことないよって笑うだろうね。
「暑いねーヒロト」
「そうだね、どこかで少し涼むかい」
「それいいね!あ、あそこの大きな公園に確か池があったはず!いこうよー!」
オレから手を取って走ろうとすると、ヒロトは動かなかった。
「ヒロト……?」
どうしたのだろうか、具合でも悪かったのかなとオレが近付くとヒロトは涙を一つこぼした。
「えっ?!な、なに?!どうしたの?!」
「あ、悪い……嬉しくてさ」
「?なにが?」
オレが首を傾げると、ヒロトが頭を撫でた。急に撫でられてビクッとすると今度はクスクスと笑い始めた。
「大丈夫、こんな公道で手を出さないから」
「あったり前じゃん!!」
怒ると撫でていた手は離れていく。ああ、離れてほしくないとその手を取るとヒロトはぎゅうと握り返した。
「緑川ありがとう。ここにいてくれて。ーーオレの隣にいてくれ」
ヒロトは分かってくれている。オレがこの隣にいるために頑張ったことを。ヒロトを支えるために秘書になったことを。
ずっと昔から好きだよとオレに言ってくれた言葉を今こそきっと返せるはずだ。
「だってヒロトのことが世界でオレが一番好きだから」
はにかむオレをみてヒロトは今それはズルいと顔を隠していた。耳が真っ赤なのは暑さのせいじゃないとオレも分かっている。
20210813
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