願ったために【創作BL】◆





※◆マークついてるものの同じカプ話です。
幼馴染み同士の社会人(ショウ)高校生(アキラ)
受けの両親亡くなって、攻めと義兄弟になった後
お題「君より先にしにたい」




 
「こんなに会わないし会話もしないのはいつ振りだろうか」
休みの日、やることもなくただボーッとテレビを眺めていた。一人暮らしをする前ならテレビなんてあまりみることもなかった。テレビよりみたいもの、知りたいものがあったからだ。
隣を見ても散らかった床の先にベランダが見えるだけ、前を見ても真っ白な壁に時計が掛かっているだけ、周りを見渡しても俺一人なのだ。
寂しいからと何処かに言っても埋まらないだろう。
誤魔化そうと誰かと遊んでも意味がないだろう。
ポカンと空いたものは、アイツの居場所だ。俺の拠り所だ。もう少し待ってくれと頼んだのも俺だ。俺よりきっとしんどいし悲しいのに、俺は仕事を理由に家から、アイツから逃げてきた。アイツはまだ学生で逃げることはできなかったというのに。
「どうしようもないな、先に社会人になっても」
何度も伝えて伝わらなかった《好き》という二文字は綺麗に伝えられない二文字になった。お蔵入りの黒歴史になるだろう。
アイツも少し前まで同じ《好き》を持っていたかもしれない。しかし、それを確かめる術はないのだ。オレが“少し待ってくれ”と願ったために。
やることもないので床にゴロンと寝転ぶと瞼が重くなり、ああこんなとこで寝てたらまたアキラに怒られてしまうと思ってしまう。
いいや、怒られても。いや、怒られたいな今は。
 
「ショウ!こんなところで寝たら風邪引くよ!身体大きいのに僕より風邪引きやすいんだからさ!」
パッと目を開けたら制服姿のアキラがいた。
「えっ!?えっ!?」
ショウはびっくりして飛び起きると自分の服を見てああそういうことかと落ち着いた。ショウも制服姿だった。ならいいかともう一度横になったら、アキラが膨れた顔で覗き込んだ。
「もう!そんなんだったら……僕は先に行くから」
寂しく突き放した言い方にドクンと心臓の音は大きく聞こえた。
 
ーー身体じっとりと汗で濡れて暑すぎた。
飛び上がりもせずにただ心臓のうるさい音にじっと耳を傾けた。
ああ生きてる、そして……アイツは?
「スマホどこだ」
起き上がって机にあったスマホをみて電話をかけた。
怖い、何かが怖くてオレは電話をかけたのだ。声をきかせてくれ、お願いだ、電話に出てくれ。長い呼び出し音の中、オレはだんだん目覚めて頭を働かせていく。
少し待ってなんて本当に図々しかった。謝りたい、なんでオレはアイツを一人にさせた?
呼び出し音は終わりを告げて電話は切れた。
繋がらないざわつきはオレを立ち上がらせて、急ぎ足で玄関へと向いた。




20210812





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