冷たいから離したの【基緑】





※無印1期と2期の間。
お題「君の手は温かいね」



嫌な夢のあとに手繰り寄せたのは隣に眠る緑川の手だった。
「よかった、いてくれた。あったかい……」
オレはその手を握りしめながらまた瞼を閉じていく。今度はきっと大丈夫。きっと明るい未来がある。そう信じてもいいと緑川の手を握ると思うのだった。
 
 
「お日さま園でお昼寝の時間にさ、ヒロトはオレの手を時々掴んで離さなかったよね」
緑川は唐突に話し始めた。
「それは……その」
言いづらい。あまりいい理由ではなかったから。
「オレはさ、嬉しかったんだよ。いつも周りに注目され、頼られるヒロトがオレを頼ってるんだなと思った」
「緑川……それはいつもさ。いつも緑川には頼りっぱなしだよ」
緑川はそっかと少し照れて顔を掻く。小さい頃も、今もずっと隣りにいてくれる大切な存在だ。
「じゃあ、オレの手が冷たくなっても頼ってね」
そういって笑う君の目つきが、髪型が変わっていく。
ああ、またこの夢の始まりだ。オレが見向きもせずに頼った緑川の手を取らなかった日々を、今日もまた後悔して生きていく。



20210811




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