その先に【トラシグ】



プロチームの投球式に参加することになり、そういえば3人とも野球観戦をしたことないことに気付いた。
「じゃあ!行こうよ!今度の休みに3人で!」
奏がいうと他の二人も了承して、こうしてとある球場にきたのだった。

「美味しいものが沢山あるね!」
「……お前それ全部食べるのか?」
奏の手には顔が見えなくなるくらいの量の料理を持っていた。野球観戦しに来たはずなのにこれでは食べ放題にきたかのようだ。
「そういう純哉も結構量が多いぞ」
慎は自分たちの席を探しながら、純哉の料理に目線が行く。
「まあ、こういうところの料理って美味いからついな……」
「あ、ここだ。席が広めで良かったな」
疲れたのか慎は早々に座ったかと思えば、どこで手に入れたのかえんがわの握りパックを出し始めた。
「って慎も買ったんかい!」
純哉がツッコむと後ろにいた奏が笑っていた。
 
 
ーーーー試合は後半、一対一といい試合だった。
自分たちがいる席では緑のユニフォームを着たチームのファンが多いようで、点が入ったりアウトを取ると大きな歓声が上がる。
「なんかいいよね、こういうの!」
奏は興奮気味に純哉の肩を揺さぶった。
「応援ってこんなに知らない人とでも熱く同じものを応援できる。すごいよね!」
纏まっていないが言いたいことは分かる。純哉はああと頷いた。
「普段ならオレたちがこの声を浴びている側だからな。応援する側にいるのはあまりないし……」
「みんなが見ているのは夢や希望だ。それをオレたちは応援しているんだ」
今度は慎が奏の肩をガシッと掴んだ。奏は驚きながらもキラキラとした慎の瞳の圧に真面目に言っていることがわかった。
「し、慎!ど、どうした……?」
「先程お隣にいた方からご教授頂いた」
純哉は顔を出して慎の隣をみるとかなり熱のあるファンであることが格好からして分かる。だがいつの間に話していたのだろうか。試合に夢中で気付かなかった。
「オレたちもそのことを忘れないようにしよう」
「あ、ああ……それは分かるが」
「あ!塁に出た!次打てばサヨナラだ!」
奏は立ち上がって声を出す。一応芸能人だから目立たないようにと言ってあるが、声を出した瞬間に奏はヤバいと口を抑えて座った。
「バレちゃったかな……」
純哉にきくと首を振った。
「今のは平気だろ。見ろよ隣、慎は声を出さずに立って手に力が入っている。それだけ夢中なのさ」
奏がみると純哉の言うとおり、立ち上がっていてよく周りを見たら他の人々も立ち上がって応援している。逆に座っているオレたちが目立ちそうだ。
「まあこうなったら気にせず応援しようぜ!」
「うん!がんばれーー!」
二人も立ち上がっていてエールを送る。
三人はエールを送る時の熱量を改めて思い出した一日になったのだった。




20210808




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