意味が変われば扉も開く【ひいあい】





※付き合ってる?
お題「恋人をぎゅってしてみよう!」





「恋人のように相手をギュッとハグしてね……?そしたら脱出出来るよって……」
「ウム。また閉じ込まれたみたいだけど、今回は簡単で良かったね!藍良!」
「なんでヒロくんは動揺しないのーーーー!」
思いっきり藍良は叫んだ。4畳ほどの白い壁の何もない部屋に唯一の出口であろう扉にはそう書いてあった。
確かにこの前のキス強制されるよりかはいいかもしれないが、ハグもなかなかハードルが高い。
「じゃあ藍良」
一彩は手を広げた。おれは動かずに一彩をじっと見つめた。どこにカメラがあるか分からないし、テレビの取り高的にはこんな簡単で良いのだろうか。
考えても仕方ない。おれは広げられた腕に収まると一彩は抱き締めた。
するとどこからともなくブーーーー!という嫌な音が鳴り響いた。
「え、わ、何!?」
「どうやら不正解のようだね。簡単だと思ったが何が悪かったのかな」
「だからなんでヒロくんはそんな冷静なの!えーー何がいけなかったんだろう?」
抱き締めていた腕を解かれて、一彩は顎に手を当てて考え始めた。藍良も真面目に考えることにする。ハグはちゃんとしたのに不正解。となると、恋人のようにって部分が駄目だった部分だろう。恋人のようなハグってなんだろうか。
うーんうーんと考えていると、耳元で「藍良」と囁かれた。
「わっ!?なに!?」
藍良は驚いて耳に自分の手を当てる。耳元で囁かれた自分の名前は一気に顔を真っ赤にさせた。囁かれるとこんな気持ちになるのかと自分でも驚いた。
「藍良が前にこういうことはこっそり言ってねと言われたから……」
一彩も藍良の反応に驚いたようで、一歩引いたあと首を傾げた。
「何の話!?てか今その話は必要!?」
「うん。必要だよ。じゃあ失礼するよ」
と、もう一度耳に一彩の息がかかる。
「藍良、好きだよ。そういう意味で抱き締めるね」
ああ、ヤバいと思ったのも束の間だった。一彩は藍良をギュッと抱き締めた。バクバクと心拍数が加速して何も言えない。
 《好きだから抱き締めている》
その事実がいつものハグとは違うんだと自覚して身体を熱くさせた。このまま抱き締められたままでいたい。だから、と藍良は口を開いた。
「お、おれもすーーーー」

ピンポーンという音とガチャッと鍵の外れるような音がした。
 
 
 
ピンポーンという音が耳元から聞こえた。藍良が目をなんとか開けて近くにあるであろうスマートフォンを手繰り寄せた。
時刻は朝とお昼の中間地点くらいだった。
「ゆ、夢かあ……」
ぼんやりとしか覚えていないが、前も見た夢と同じような展開だった気がする。でも前とは違ってすごく良かった夢だ。きっと昨日同じようなことを一彩に言われたからだろう。
「好きだから抱き締めている、か……」
ボソリと出た独り言に思わず口元が緩んだのだった。 


20210807




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