聞き取りテスト【創作】



た」


 
 
意味が分からないなあと私はスマートフォンから聞こえてくる罵声をBGMにして洗濯物を畳んでいく。言葉にもならない、本当に意味が分からないような唸り声と嘆き声といろいろが混ざり合ってああこの人はこういう人ねとやれやれと畳み終えた。キレイに畳まれた洗濯物を今度はクローゼットへとしまっていく。
「きいている?!?!」
やっと聞き取れた言葉がそれだったので、私はスマートフォンの近くに行った。
「きいてる、きいてる」
「だから〇〇〇よ」
ああ聞き取れなかった。穴埋め問題のように分からない。ごめんなに?と返すと相手はまた怒り出した。
はーーよくこんな怒ってしまえるね。私はもう一台のスマートフォンを取り出して電話をかけた。
「あーもしもし?うん、洗濯物畳んでしまったから帰ったら褒めてね!え、合鍵作っちゃった!何も言わなくてごめん!でもその方がいいでしょー?」
甘えた声を出すと電話の先で仕方ないなってため息が聞こえてきた。よかった、今度は怒っていない。私はじゃあまたあとでね!と電話を切ると、静かになっていたもう一つのスマートフォンを手に取った。
切れたかなと思ったらまだ繋がっている。
「あなた、どうかしてるよ。もう全てが分からないよ」
「そうだね、でも私はあなたを愛していたの。何度も何度もそう伝えたのに信じなかったよねどこか」
こちらの電話の先も怒っていない。しかも聞き取れて会話ができて安心する。
「そう…………だったかもしれない。私はあなたを信じられなかった。今が一番信じられないけど」
大きく息を吸い込む音がする。それは彼女が決意を固めた証拠だったなと思い出す。
「別れてよ、私と」
はっきりと分かった答えに私は涙も出なかった。もうきっといつか、流してしまったのだ。この答えも。





20210804




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