キスしない理由【いつ純】




※付き合ってます
お題「こっちを向いて!」


 
顔を逸らされていつまで経っても目を合わせようとしない。
「なあーいつきいい加減にしてくれよー」
「純哉くんが悪いんですよ!」
「だからってな……人前でキスをするのは……」
純哉はため息をこぼした。頭の良いいつきならオレの言い分は分かっているはずだ。
「ドラマの中での話でしょう!?うまく周りを納得させるようなアドリブをされて、オレびっくりしちゃって……」
いつきはボロボロと泣き出した。純哉は慌ててティッシュを差し出すとやっぱり目を合わせなかったが受け取ってくれた。
「何にそんな驚いたんだ?いつきは……」
「……純哉くんが格好良くてこっちから今すぐにでもキスをしたくて、でも役柄的にそれは出来ないしと必死に我慢したんです。格好良すぎますよ……あれ。正直めちゃくちゃ悔しかったです」
いつきは涙を拭きながらやっと話してくれた。そうか、格好良かったか。そう思えるのは嬉しい。けどそれは置いといて、だ。
「オレの方が泣きたいけどな、やっとスケジュールが合っていつきと二人きりになったのに目を合わして話してくれないから。全然楽しくないだろ、今」
すると隣に座っていたいつきが純哉の顔を両手で手にとって目線を合わせた。泣いていたためかいつきの瞳はまだ潤んでいる。寂しそうな悔しそうな表情をしているがそれでも熱い手は心地よい。やっと目を合わせてくれた。
「顔近いな……」
「でも純哉くんは見たかったんですよね」
「まあな」
純哉はニッと微笑んで口づけをした。数秒の短いキスをした後のいつきの表情がたまらなく愛おしい。もっとしたいという欲が見え見えなのに、まずオレの様子をみる要らない優しさがじれったい。
「ーーーーお前とのキスが1番好きだから、なるべくしたくないんだよ。あーあ、いつきがそういうならアドリブしなきゃ……ムグッ!?」
「ん……純哉くん煽りすぎです。止まらないですよ?」
深く長いキスはオレを満たしていく。あの時演技でもキスをしなくてよかったと心底思ったのだった。





20210801




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