君といると温かい【創作】



 
昼休みは隣の席にクラスが違う親友が座り、一緒にご飯を食べる。昨日のテレビの話や先生の話、授業のこと、多くをそこで喋っていた。
「ここの席の人まだ学校に来ないの?」
「うんそうなんだよね、このまま1年顔も知らずに終わるのかなあ」
私は答えながら何もぶら下がっていない机を見つめた。
「人が座っている椅子は温かいけど、この椅子って冷たいんだよね。春頃はちょっとびっくりしてた」
でも気兼ねなく座れるのはラッキーと話していた。そんな多くの会話の中の1つが今日はなんだか気になった。
放課後、いつの間にか教室には私しかいなかった。まだ外は明るく部活動をしている声も微かに聞こえる。帰ろうとしてカバンを持ち上げたとき、ふと隣の席をみた。
「ちょっと私も座ってみようかな」
別にここの席の人はいないんだし、と持ち上げたカバンを自分の席に置いて隣の席に座った。
「……え!?あ?!」
びっくりして私はすぐにその椅子から立ち上がった。
温かい。確かに今日は少し汗ばむくらいだが、人肌並みには温かいのだ。まるで今の今まで誰かが座っていたくらい。
私は周りを見渡したし、記憶を振り返っても今日ここに座ったのは親友だけだ。すると急に息が苦しくなって呼吸がしずらくなり涙が出てきた。
「あ、な……どういう…………」
私は床にへたり込んで乱れる呼吸を必死に整えようとする。すると頭の上から声が降ってきた。
「ねえ思い出したの?私の体温」
ゆっくりと顔を上げると、椅子に座る親友の姿があった。ヒューヒューとするばかりで私は声が出ない。
「あれ?まだかな、ねえ早く思い出して。私との楽しい思い出に囚われずに」
親友である彼女は笑っている。私はボロボロと涙を流すばかりで何か大切なことを忘れていることは分かった。それがなんだったのか。
「この席は誰のかな」
「そ、その席は……」
私はさらに苦しくなってそのまま倒れてしまった。 
そうか、その席はいじめで来られなくなった親友の席だ。私が助けられずに見捨てた親友の。
目を開けると、担任の先生が大丈夫!?と私を揺すっていた。
私は起き上がって隣の席をみると透明な細いビンに入った白い花が綺麗に咲いていた。




20210730




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