体温より信じて【基緑】




※付き合ってます。
お題「君だけが癒せる傷」



 
距離が縮んであと少しだけと甘えてしまう自分を許して欲しい。不安になる心が言葉よりも君の体温を信じようとする。君の体温が温かいから、まだ少しだけと触れていたい。
「緑川、わかっているの?」
「……なに。手をどけてよ、みんなのところに戻らせてよ」
尖らした唇をぺろりと舐めるとすぐに赤くなって手を動かそうとするが力ではオレの方が強い。
「わかってるよね、君はオレが好きなんだ。だからオレだけをみていてほし
い」
「それはできないって前も話しただろッ!……もう!手を離せよヒロト!」
赤くなりながらも嫌がる顔が誘っているようで手を出したくなる。理性が飛ばないように気をつけなくては。ああ、ひたすらこうしてオレのこと考えていてほしいな、好きでも、嫌いでもーーーー。
「ヒロト……お願い……離して」
泣きそうな声にハッとして手を離した。手を離されて緑川はズルズルとその場に手首を押さえながらしゃがんだ。泣かせたいわけじゃないのに、どうしてうまくいかないのだろう。堪えていたのに伝えてしまうのだろう。
言葉なんかより体温が信じやすいから?
それは……………それだと緑川のことを好きになることはないのだ。
「ごめん、緑川。ごめん」
オレもしゃがんで緑川の顔を見ようとすると、頭を引き寄せられて唇を塞がれた。唇が離れると緑川はえへへと笑っている。暗闇でも光るかのような笑顔だ。
「ヒロトが泣いたらオレは嫌だな。オレこそごめんね、ヒロトだけを見ていられなくて」
たった1つの光はそういってオレを慰める。オレのものなのに独占は出来ないもどかしさを今日もくれる。
「オレも好きだよ、ヒロト」
その言葉を信じて、もどかしくても生きていく。君が好きだから。




20210725






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