まさか【蘭マサ】




※付き合ってません。高校生あたり。
お題「論理的に考えて、恋するなんてありえなかったのに……!」





「それって恋じゃん!」
そんな声が聞こえてきてビクリとした。振り返ったら女子二人が楽しそうに会話をしていた。狩屋は胸を撫で下ろして向き直して電車が来るのを待つ。
恋なわけないのだ。センパイが自分の手を触って必要以上なリアクションしてしまったり、センパイの顔の近さだったり、お前がいないと駄目だとかそんなのにドキドキするのは気のせいなのだ。
ただ驚いてしまっただけ、そこに好意も愛もなく恋が始まることもない。センパイはオレを好きになるわけがないのだ。こんな厄介な一後輩にただお節介しているだけ……普通に考えたら分かることだ。
「狩屋、今帰りか?」
「わっセンパイ!?び、びっくりしたーー」
どきりと跳ねた心臓はお化け屋敷と同じ現象だ。尚もまだおさまらないのは仕方ない。
「そんねに驚かなくていいだろ、失礼な奴だな」
霧野はそういって狩屋の隣に並んだ。霧野が電車で帰宅する方ではない。なんでここにいるのだろう。
「失礼というか……あの、なんでいるんですか?センパイとこんなところで会うと思わなかったんですけど」
「いたら悪いのか?」
「いや、悪いとかじゃなくて……」
なんでそんなにひねくれている?とついイラッとしたが、ひねくれているといつも言われているのはオレの方だ。
すると霧野はじりじりと狩屋の方へ身体を寄せてくる。というか後からきたんだから後ろに並べと怒ろうと思いつつ、鳴り止まない心臓付近に手を当てた。
「狩屋に話があって来たんだよ。お前なんでオレを避けるんだ?今も少し近寄っただけで離れようとする」
「ち、ちが……」
違うとは言えない。実際今も離れたい。胸がドキドキで壊れそうだから。
「センパイが近すぎるんですよ、パーソナルスペース!だからオレじゃなくても離れるはず……」
「神童はいつも通りだが?他のみんなも」
神童センパイはパーソナルスペース以前に色々違うでしょ!とつっこみそうになる。グイグイと近寄ってくる数センチが拒否したくなる。自分を混乱させていつも通りでいられなくする。
「あ、電車がきた」
構内でもアナウンスが流れて線路の先に電車が見えてくる。ああ良かった、この状況から逃げられると胸を撫で下ろした。しかし、センパイはそんな束の間さえ見逃さない。パッと手を掴んで離さない。
「狩屋!ーーオレがまたなにかしたか?」
「!!……そうかもしれないですね」
目の前にきた電車に手を振りほどいて狩屋は飛び乗った。
「ここが痛いんですよ…………センパイといると」
電車のドアが閉まってすぐに出発したから真っ赤な顔はきっと見られなかったはずと狩屋はゴツンと頭をドアにぶつけた。




20210722




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