言えないことに嫉妬する【 奏純 】




※付き合ってます。
お題「愛してるっていってほしかった」




「純哉くんはさ、三神さんのことが好きだよね本当に」
そんな言葉がぽろりと落ちて、純哉に火を灯して段々と顔を赤くしていく。怒鳴るように捲し立てるように奏を責めるが、もう本当に好きなんだなあとしか伝わらなかった。そんなに好きならさ、お得意の一言を言ってあげたらいいのに。
「なんで三神さんに愛してますって言えないの?」
「あの、だからさ!!そんなこと言えないだろ!?お前だってオレの三神さんに対する想い分かってるだろ!そんな簡単には言えないの!一言だけで済ませられる問題じゃない!」
ファンとして、同じアイドルとして尊敬し慕い崇高しているのは知っている。だけどなにか納得がいかないのだ。
《愛している》を格好良くいつも言えている純哉が本当に好きな人に対しては言えないだなんて……正直三神さんがずるく思ってしまう。
「ねえ、オレには言えるよね?」
「え、ああ……。奏、愛してるぞ」
純哉は手を奏の後ろ髪へと伸ばして触りながら声が小さくなりながらも言えた。ズキリとした痛みは、ズルいと思う気持ちをより一層大きくさせる。ああどうして、なんで言えちゃうの?
顔を近付けると純哉はそっと目を瞑る。奏は期待された純哉の唇を指でなぞるとビクッと身体を震わせてから目を開いた。
「ごめん、期待させたね」
下唇を親指をつまみ滑らせて離すとさっきと同じくらい真っ赤になってる。
「可愛いね」
グイッと純哉は奏の胸を押した。顔は真っ赤なままなにか言いたそうにしながらも口は閉ざしたままだ。
困らせたかった。そんなつもりはなかった。自分の想いがどちらかは決められない。奏は閉ざされた唇にキスをして、小さくオレも愛していると伝えると純哉は答えるようにキスを返した。
言えない愛してるに嫉妬しても意味ないなと夜は深くなっていく。



20210721




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