声【牙ノボ】





※ノボルおたおめ!付き合ってませんし、本編から何年後かの話。
お題「振り払ったら二度と繋げない気がした」



「やっぱ未門牙王はすごいなー!!」
街頭のTVモニターをみていた人から聞こえてきた声についついチッと舌打ちした。いつからか、牙王の名前を聞く度に舌打ちをしてしまうのが癖になってしまった。
牙王は確かに凄い。多くの人がそれを認めているし、オレが一目置いている人たちの目線もオレが受けるものとは違う。
それが悔しいし……けれど認めざるを得ない。あいつは凄いのだ、オレよりも。
と、ポケットに入っていたスマートフォンがブーブーと震えた。取り出して見てみるとその牙王からの電話だ。
「もしもし!ノボルか!」
「……なに、オレちょっと忙しいんだけど」
本当は全然忙しくない。きっと牙王よりもだ。ジメジメとした気持ちが口の滑りを悪くする。
「わりぃ!けどさ、言わなくちゃって!……ノボル今日誕生日だよな!今年もおめでとう!!」
ドクンと胸が大きな音を立てた。口角が思わず上がるのを手で押さえた。
「あ、ああ……よ、よく毎年覚えてるな……オレの誕生日を」
なんともないように精一杯振る舞って声を出す。嬉しくて声がひっくり返りそうだ。
「だってノボルの誕生日だろ!あったりまえじゃん!今度そっちに行ったときにまたファイトしてくれよな!ノボルと戦うのオレ、すっごく好きだから!」
元気に楽しく話す牙王の声に、また悔しさがこみ上げてくる。今度は勝つ!絶対に勝つ!だからじっとしてられない。
「おう!じゃあそろそろいくから……ありがとう牙王」
牙王の返事を待つ前に電話を切った。返事の声を聞いたらもっと聞きたくなってしまうからだ。




20210720





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