余裕はないよ【照吹】




※ただ付き合ってる
お題「せーの!でいおう」





「じゃあ、こうしよう?せーの!で互いに好きなところ言おうよ」
吹雪が頬を膨らまして照美に提案した。照美がその頬に触れると、今にも噛みつきそうな目でこちらを睨んでくる。
言うとか言わないの前にすでに可愛くて愛しいから、抱きしめたくなるが吹雪はうまく避けてしまうだろう。
照美は兎に角早く吹雪を抱きしめたい。久々の恋人との再会をこの腕で感じたいのだ。
「……分かったよ」
照美が頬から手を離した。
「あ、全部とか無しだから!わかってるよね!」
ニコニコと笑いながらもまだ怒っているので、照美ははいはいと返事をした。
「じゃあ、いくよ?せーの!」
吹雪が合図して二人とも口を開いた。
「いつも余裕そうなところだよ!」
「余裕があるところだね」
あれと気付いて、二人は互いに目を見てパチクリしてどちらかが吹き出した。
「同じなんだ……ね。でも僕、余裕あるところなんて」
吹雪がクスクスと笑いながらもいうと、照美は吹雪の頭を優しく撫でた。
「あるだろう?このやり取りだって、ただちょっとからかいたかっただけで君は怒ってない。まあそういうところも素敵なんだけれど」
「褒めるね。照美くんだって気づきながらもこの茶番に付き合ってくれた。久々に会う恋人同士のプチ喧嘩」
照美はついにハハハッと声に出してひとしきり笑うと、吹雪の顎に手を添えた。
「さあて、吹雪くん。君の余裕を奪うよ」
顔をグッと近付けるが吹雪は照れもせずにニコリと笑った。
「僕だって、君の余裕吹き飛ばす」
照美も同じように微笑んだ。
最初から本当に余裕なんてないんだけどなあと目を瞑る愛しき君を奪いにいったのだった。


20210714




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