内緒にしてる【奏慎】



※付き合ってません。お題「君には内緒」




溢れ出した想いが自分の中に納まらなくて手放すことも考えた。
「夢ならいいな」
つい読んでいた台本の台詞が口から出た。
仕事終わりのロケバスで、俺の肩に頭を寄せて眠る奏は気持ちよさそうでおそらく聞こえていないだろう。
ーーきっと隣で高鳴っている心臓の音も、だ。
そっと台本を閉じてカーテンを少し開けて外を見た。まだ高速道路を走っていて、街の明かりは遠くどこにいるのかさえはっきりとしない。
いつの間にか自分の心に光っていたものは、赤く揺らめいていてこれは自分のものだろうかと疑った。
それの本当の名前を知ったらきっと消えてしまうかもと「奏」と呼ぶのが精一杯だった。
揺らめいた赤は俺に違ったものを与えてくれる。
欲で触れたいと思ったり、知らない誰かに対して嫉妬したり、1番に俺の名前を呼んでと願ったりする。
この想いを伝えたいと思うこともある。けれど、伝えたら奏はこの感情になんて名前をつけるだろう?

夢ならいいなと言ってしまう先程の役も今の自分と重なるところが多い。
「奏、オレは……」
寝ているお前の手を握るだけで精一杯だ。
そのまま慎も目を瞑った。






20210711 




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