受け止めてよ、愛を【蘭マサ】




※付き合ってます。
お題「ばーかって叫んでやる」



  
 
何度言葉で伝えても口づけを交わそうとこちらの気持ちを信じようとはしなかった。狩屋の過去は本人から聞いたこともあるし保護者のヒロトさんにもきいた。どうしたら信じてくれるだろうか?とずっと思っていた。
 
「センパイはバカなんですよ」
「おま……それはないだろう」
見晴らしの良い高台で街を見下ろしながらオレは狩屋に正直に話したのだ。どうしたら素直に受け止めてくれるかと。
「オレはお前が好きだ。そんで、今は手を繋げることが嬉しい。狩屋はそうじゃないのか?」
「う、うれしいですよ……。ーーこれじゃあだめですか?センパイの望むような解答ですか?」
赤くなっている頬を掻きながら狩屋はそっぽを向いた。照れた顔を見せたくないのが可愛らしい。でもそっぽを向かれて寂しくもあって、オレは狩屋の頭に手を乗せた。
「オレの望む解答か……。なあ狩屋、お前はオレの前で別にいい子ちゃんしてないだろ」
「……なんですか、今度は説教ですか?」
「違うよ。オレはさ、お前を好きって言うけれど、さっきも言ったようにお前はオレが本当にそう思ってないと感じていた。だけど、それは間違い、不正解かもしれない」
頭を撫でられている狩屋はこちらに顔を向けた。オレは夕日に染まっていく街をみながら続けて話していく。
「オレ自身が気付かないくらいきっと狩屋はオレのことが好きで、愛してくれてる。それはもうむちゃくちゃ特大だ。だけど、オレが受け止めきれていないんだ。取りこぼしている。だから不安になってーーーー信じていなかったのはオレの方だ。すまん」
撫でていた手を止めて、オレは狩屋に頭を下げた。
自分が望むような狩屋を求めていた。それはオレが好きになった狩屋ではなく、いい子ちゃんな狩屋だ。こんな簡単なことに今更気付くなんて狩屋の言う通り本当に馬鹿だ。
トントンと肩を叩かれて、顔を上げると胸に狩屋が飛び込んできた。
「ば、バカですよ!?!?センパイは!!!……ッグズ、もう」
「お前泣いているのか?」
顔を見ようとするが、ぴったりと抱きしめられたまま顔を見せようとしない。仕方ないなあと再び頭を撫でて抱き締めると今度は嗚咽を漏らしながら泣き始めた。
「よく分からんが泣け泣け、それでもオレはお前が好きだぞ」




20210710




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