おやすみなさい【奏純】




※お題「眠れないんだ、話し相手になって」




 うまく眠りに落ちかけていたのにブーブーと唸るスマートフォンに重たい瞼を上げた。しかもメッセージとかではなく電話である。仕方ないと通話ボタンを押した。
「純哉くん、ねえ起きてる?」
「……起きてるから今電話に出たんだろ、なんだよこんな夜中に」
「ごめんね、なんか眠れなくてさ」
ごめんともう一度寂しそうにいう奏が可愛くて思えてしまい、身体を起こしていいよ、何か話せと奏の声に耳を傾けた。
出る直前まで不機嫌になってたのが少し和らいだ。
「何か話せってーー純哉くんはさあ、今日ぐっすり眠れそうなの?」
「んーーどうかな、この電話次第かな。奏が眠りに良い話でもしてくれたら削られた睡眠時間を取り戻せるかもしれない」
意地悪なことをいうと、えー!という戸惑いの声が聞こえてきた。可愛いなとついついもう少しと欲が出る。
「もう一度さ、あの時の言葉いってみなよ?」
「あの言葉って?」
「今日オレになんて告白したっけ?」
「ーーーー!!!!なっ、ズルい!!!純哉くんだって……!」
「おま、声がデカい!トーン落とせよ」
シーッというとだってとまだ小さく言っている。
分かっているよ、お前が今何で眠れないかなんて。オレだって信じられなくて、でも思い出すと心臓が痛くなる程嬉しかったから。
「うう……でもよく覚えてないよ。必死だったし、無理だと思っていたから」
「それはオレも同じだよ。伝えちゃいけないと思ってたのに、お前が壊したんだよ。そんなオレを」
「…………」
奏が黙ってしまった。なんかマズかったかなと思っていると、フフッと笑い声が聞こえてきた。
「ありがとう。純哉くん大好きだよ、ああずっとこのまま喋りたいし会いたくなるからもう切るね」
「え、ああ……」
急に切るというから少し残念に思っているとまた笑ってる。
「純哉くん、今の可愛いよ」
「……うるせー明日の仕事、遅刻するなよ!おやすみ!」
オレがさっき奏のことを可愛いと思ったように、自分もそう思われるとついムキになってしまう。なんか悔しいのだ。可愛いのはお前だって言い返したくなる。
「うん、おやすみなさい!」
と嬉しそうに言って本当に切る奏には言い返せなかった。


20210706




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