強さから逃げて【創作BL】◆



※幼馴染み同士の社会人(ショウ)×高校生(アキラ)
受けの両親亡くなって、攻めと義兄弟になった後
お題「君って強いね……」




 
 
いいタイミングだったと思う。転勤が決まって実家から離れて一人暮らしをすることになった。親は通えない距離じゃないかといったが、おそらくは新しい弟が寂しがってしまうだろうという問い掛けだった。
そんなことを言っても新しい弟は高3で来年にはおそらく家を出るだろう。養子として迎えずとも良かったのだ。親が本人に訊かずに勝手に決めたこと、未だに納得していない。
もしかしたら、オレのせいではと思ってしまう。
オレがあいつを好きだと知って、それを諦めさせようとしてこんな訳のわからないことを……。
汗が背中をタラタラと流れてベタベタとTシャツがまとわりつき、額の汗が荷物を下ろした拍子にパラパラと落ちていった。
「とりあえず荷物運び終えたな……」
実家の自分の部屋より小さく感じるこの部屋が、オレがこれから住む場所だ。
掃除をして最低限のものを出したら夜も暮れてしまうだろう。フーッと息を吐いてその場に座って足を伸ばしていると、スマートフォンが点滅した。
画面を見ると、《アキラ》の文字が浮かんできた。一瞬戸惑ってから電話のボタンをタップした。
「あ、荷物運び終わった?」
「ああ……疲れたよ」
ははっと乾いた笑いが出てしまう。アキラにはオレが逃げたように見えるだろう。弟になる前に交わしたものは夢だったと忘れようとしても、家にいたらどうしても会ってしまう。気まずくならないようにしたいと思っていたのにオレは駄目だった。
「ねえ、今度そっちに遊びに行ってもいい?」
「落ち着いたらな……ごめん、明日も仕事だからもう切るよ」
アキラの甘えた声に流されそうになる。好きだと伝えた奴が弟になるなんて思わなかった。あの日の笑いながら泣いた灰色と黒の光景をずっと覚えている。
 
通話を終えてから、床にバタンと倒れて力が入ってない手の先を眺めた。
「強いなあアキラは……」
もう少し待ってほしいと見つめてた手を握った。




20210705




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