止められない【ひいあい】



※一彩にガチ恋オタク出てきます。
付き合ってる。
お題「失恋したって本当?」




 
《天城一彩には好きな人がいるらしい》
 
そんな噂がSNS上に流れており、発見したとき冷や汗をかいた。藍良はどこからこの情報が流れているのか夜を徹して探し出し、最初に言い出した人のアカウントを見つけた。そのアカウントをもう少し探ると、制服を着た写真がありそれを見る限りどうやら夢ノ咲の普通科に所属しているようだ。
またその写真には見覚えのある一彩の名前が可愛く散りばめられた手作りのロゼットが写っている。
「もしかしてこの子、この前の握手会で泣き崩れた子……?」
ハッと気付いて問題の発言の日付を確認するとあの握手会の日の夜だった。
「ーー!!だから言ったのに!!ヒロくん!!」
 
藍良は次の日朝一番に一彩の元へと行った。部屋に行ってもいなかったので探していると寮の外を歩いているのを見つけて、ズンズンと近づいていくとこちらの怒っている様子をさも分からないように爽やかな笑顔を見せた。
「藍良にしては今日は早いね!!藍良も散歩かい?」
「ちっがう!!!!ヒロくん!ちょっとこっちきて!」
なんでそんな呑気なんだ!と怒鳴りつけたいが徹夜した身には朝にそんな勢いは残ってなかった。
人気のない寮の陰にきて、藍良はスマホを操作して例の子の写真を一彩に見せた。
「ヒロくん知ってるよね?この子。この前の握手会で泣き崩れた子だよね?」
「……そうだね。でもそれがどうしたの?」
どうしたのではない。
「ーーこの子、ヒロくんには好きな人がいるって噂してるんだけど。ねえ、何があったの?あの日、結局ヒロくんも何があったか教えてくれなかったよね?」
藍良は一彩の手首を掴んで力を入れた。こんなことしてもおれより力のある一彩は大したことないだろう。けれど、本当のことを知りたかった。どうしてこんな噂が流れているのか、あの日あの子は何故泣いてしまったのか。

「……あの日、告白されたんだ。好きだと言われた。アイドルの僕が好きだというものだと思っていたが、いつもと違った感じがしたから素直に『好きな人がいるからごめん』と頭を下げて謝ったんだ」

ドルオタをしているおれはなんとなく分かっていた。あの日泣いてしまったあの子の理由も、この噂を流した理由も。好きになって苦しくて、どうしても伝えたかったのだろう。本気で好きだと。他の子の好きとは自分は違うんだと。
けれども。
 
藍良はポカポカと一彩のお腹を力なく叩いた。
「ばか、ばかヒロくん。ほんと、分かってないよアイドルのこと」
「うん、だから藍良がこれからも教えてくれ。アイドルのこと」
一彩は藍良の叩く腕を止めて、藍良の顔に手を添えた。
「……アイドルならしないでほしいよ。好きな感情を拒否しないで」
「うん。だけど、辛そうな藍良のことも無視は出来ない」
そっと口づけした一彩はアイドルの顔はしていなかった。けれど自分の感情に素直な一彩も好きだなあと二度目は自分から唇へと近付いてしまうのだった。




20210704




prev next








×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -