好きな犬の話/好きな犬とお風呂の話【奏純】



※付き合ってる
お題「命令します、犬になって?」



 
あまりにも奏がくっつきたがるので暑さでよく考えもしなかったのだ。
「一週間!くっついてこなかったら2時間だけなんでもいうこときいてやる!」
そう奏に言い放つとめちゃくちゃ傷付いた顔をする。その顔に負けそうになりながらも、やっぱナシでは格好悪い。
奏は渋々了承したが、後々に何を命令されるのだろうかと考えてしまった。その後の一週間、奏はオレに触れることすらせずに過ごした。だんだんと寂しくなってきたのはオレの方だ。自分から触れるわけにもいかずにもだもだと日々を過ごした。
今日の仕事が終わると、二人は一緒に純哉の部屋へと帰宅した。
「オレ、純哉くんとの約束守ったよ」
「ん、ああ……」
夕食を食べ終わると奏は純哉と食器を洗いながら話を切り出した。
「なんでも、いいんだよね」
「いいよ、但し2時間の延長は駄目だぞ」
素っ気なく言いつつもドキドキと心臓が痛い。奏のことだからそんな大したことはないと思いつつも、恋人ならではのありがちなことも妄想していた。
「あのね、純哉くん。2時間だけ犬になってほしいの」
ガチャン!!と拭いていた食器を落とした。5センチくらいしか落下しなかったので割れずにすんでフーッと息を吐いた。
「マジ……?そりゃ、まあ……いいけどお前より上手くできないぞ?ミラステで千弦に奏が暗示?だったかをかけたみたいには」
「いいよ!それでも!……でね、出来たら一緒にお風呂入ってほしい」
「ハ……?」
言葉が続かないほど驚いてると奏は少し照れくさそうにして食器を洗い終えてシンクの汚れを落としている。いや、汚れ落として誤魔化している場合か?今の話?
「まあいいよ、好きにすればこれ片付けたらでいいか?犬になるのは」
「う、うん!ありがとう純哉くん!」
と奏は純哉にひっついてこようとしたので、ストップ!と制止した。
「これ終わってからにしてくれ。割りたくない」
「ーーわかった!」
オレに待てをされてニコニコと待つあたり、本当にお前のほうが犬らしいよと純哉は笑いそうになった。 




20210625



「一緒にお風呂入ろうよ!」
無垢そうな顔で言われて、こっちは内心ドキドキなのにいざ入ったらオレが湯船に浸かり、奏は服を着たまま湯船の外から嬉しそうに見守っていた。
「純哉くん気持ちいい?」
「いや、あの……これはおかしくないか?」
「今、純哉くんは犬だから言葉喋らないー!」
奏はメッ!と怒りつつも濡れている純哉の頭を撫でた。こっちだけ裸まで風呂に浸かって、なんかソワソワしてシャワーしてたのになと純哉は撫でる手を見つめているの自然と口が開いた。
「ウーーわん!」
純哉は奏の撫でる手を甘噛みした。
「純哉くん?!え、嫌だった?」
「ウーウー」
グイグイと奏の手を引っ張って、湯船へと引きずり込もうとする。
「……一緒に入ってほしいの?」
純哉はコクンと頷いた。熱くなっていく顔は何が一番理由か分からずもう汗が止まらない。

ーー当たり前だろ、期待したのはオレだけじゃないはずだ。
 
奏の瞳をじっと見つめると、奏は純哉の横顔を撫でてゆっくりとキスをした。
「止まらなくなるけどいいの?犬みたいなじゃれ合いになるかもよ?」
少し不安そうな顔をする奏に、純哉は立ち上がって湯船を出た。熱くてかなわない。けどオレはまだご主人の愛が欲しい。
膝立ちしていた奏の首に手を回して、頬を舌でべろりと舐めて大きくワン!と吠えた。
「ーー好きだよ純哉くん」
身体の熱は冷めずに目の前の愛を食べていった。 
 




20210627




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