下手で頼りない好き【蘭マサ】



※一応同じ高校に通っている設定で付き合ってる

 
振り払った手を力任せに引っ張って誰もいない教室へと入った。
「せ、センパイ……?」
「あのな!狩屋……ッ!」
霧野は悔しそうに歯を食いしばってから狩屋を引き寄せて唇を奪った。突然のことで普段は絶対学校ではしないとオレに言っているので一瞬戸惑ったが、マズイと直感して胸をドンと押して無理やり剥がした。
「な、何に怒ってるんですが?!そりゃ痴漢されたのを言わなかったのは悪かったですけど、結局がっつりでなく終わったし、あとセンパイならともかくオレがされたなんて言うのは……」
「違うだろ!」
ボロッと一つ大きな涙が床に落ちて霧野は狩屋を睨みつけた。今までみたことないくらい怒っているのに、何が悪かったか分からないので少し怖くなった。
何が違うんだ。センパイはオレの何に怒っている。
今まで散々怒られてきたというのに分からない。大体はこれのせいで怒るだろうと予想がついているからだ。
「お前だって……お前が大事なんだ。ーーだから自分自身を軽く扱うな」
息を整えながらゆっくりと近付いてオレの肩に頭を傾け、それから腰へと手を回した。肩が少し濡れた感覚がある。オレも同じくセンパイの背中に手を回した。
「ごめん、何も出来なくて。ただ怒るしか出来なくて……頼りない恋人で」
心配して怒ってくれた。ビックリしたが、センパイはただそれしか自分の感情を伝えることが出来なかったのだ。オレ自身よりオレのことを心配してくれる人がいる。それだけで嬉しくなって、下手くそな心配の仕方に狩屋を思わずニヤけてしまう。
「頼りないかもですね、センパイはーーでも」
狩屋は耳元で囁くと抱き締めている力が強くなった。
「オレもお前が好きだよ」





20210622




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