虹【ひいあい】



※付き合ってない
お題「遠い昔にきいた歌」


梅雨の貴重な晴れ間に思わず嬉しくなってこういう時にぴったりの大好きな歌のことを思い出した。事務所までの道のりを一彩と歩きながら、これ聴いたことある?といって藍良は口ずさんだ。すると同じようにメロディーに合わせて隣にいた一彩も歌いだした。
「え、これ知ってるの……?」
「ん、ああ……歌の名前は知らないし全部は分からないけど、聴いたことあるよ」
まるで異世界からきたかのように藍良にとって当たり前のことを知らない一彩がどうしてこれは知っているのだろうか。
藍良が首を傾げていると、察したのか一彩が話し始めた。
「確か兄さんが歌っていたんだ。何故か雨に打たれながら口ずんでいてさ、僕が傘を差すまでずっと」
「そういう風習があるの?ヒロくんの故郷は」
一彩は首を横に振った。それから綺麗な青空に手を伸ばした。
「僕にはどうして兄さんがそんなことをしていたか分からなかったし、訊いても答えてはくれなかった。けれど、なんとなく……」
「なんとなく?」
「晴れることを強く信じていたんだと思う」
そう語る一彩の瞳は晴れやかな青を映し出していた。藍良はいいなあと一彩と同じように青空に手を伸ばした。
「おれもね、この歌を聴くと頑張ろうと思うんだ。すごく綺麗な景色が見られるかもって……」
一彩が藍良の手と自分の手を重ねた。
「そうだね……藍良、今度この歌をフルで聴かせて」
藍良は嬉しそうに頷いた。 




20210621




prev next








×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -