偶然【奏純】ド!



※付き合ってます!







事務所じゃなくて現場ですれ違うと少し嬉しくなってしまうのはオレだけではないだろう。少なくとも奏はそうだ。
「お、奏。ドラマ今からか?」
テレビ局で難しそうな顔をしている奏が正面から歩いてきた。考え事をしているのかそのままスルーしていこうとする。
「ちょ!奏!」
純哉は奏の腕を掴んで呼び止めた。びっくりした奏が足をようやく止めた。
「えっ!?ああ?!純哉くん!?あれ、なんで」
「なんでじゃないだろう!?考えるなら楽屋でしろ!危ないから」
自分がいる場所に気付いてごめん!と何度も頷いた。一人での活動が多いと時折心配になってしまう。腕を離すと、降りる階間違えたなーとブツブツ言っていた。
「ーー頑張るのはいいが、大事なときに怪我でもしたら大変だからサ……ほんとに頼むぞ」
視線をそらして純哉は素っ気なく言い放った。大事だから心配してしまう。けれど奏だけでなく自分も気をつけないといけない。今の顔を他の人には見られたくないからだ。
「純哉くん、こうして別々の仕事でも偶然会えるのって嬉しいね!」
こっちの気持ちを代弁したかのように奏は微笑み、それから耳打ちをする。
「可愛い顔してると、今日帰ったときにすぐ襲いたくなるから純哉くんも気をつけてね」
「バッ……!?かな……」
「あーもう急がさないとオレの次のスタジオこっちだ!」
じゃあねー!と赤くなってなかなか熱の引かないの純哉を放置してバタバタと走り去っていった。
「はあああ…………」
壁に寄っかかって自分の頬を触る。なかなか幸せなのも大変だなあと純哉は気合いを入れ直して軽くパチンと頬を叩いた。






20210619





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