可愛い方は【ひいあい】あん☆



※お題「可愛すぎるのが悪い」





数日限定のアルバイトで、とあるカフェのオープニングスタッフをやることになった。まだまだ無名に近いアイドルでも少しは役に立てるかもしれないと応募したが、先輩たちは都合がつかなかったのでおれとヒロくんですることになった。
募集したカフェのオーナーは女の子のアイドルを考えていたらしく、渡された制服がメイド喫茶みたいなフリフリの……とまで行かないが昔ながらの給仕姿のようなものだった。別の物を用意するにしても時間がないそうなので、こういったものをアイドルなら着ることありますから大丈夫です!と藍良は引き受けた。
和服にエプロンだったので、着方に戸惑っていると、ヒロくんは躊躇うことなく隣で着ていた。
「普通少し躊躇わない?!……いやいいけどさ……」
「都会だとこれが当たり前ではないのかい?郷に入っては郷に従えというし、藍良はこういったもの嫌いなのか?」
「き、嫌いじゃないけどーーもう!ヒロくん着方教えて!」
フムと頷いて着替えを手伝ってくれた。下は袴なので歩きやすくて助かった。
 

給仕を一通り教えてもらい、いよいよオープンとなった。お客さんから可愛いと何度か言われて嬉しかったが、自分以上にヒロくんに声が掛かっている。しかも女の人より男の人に、だ。それを見かける度に無性に腹立たしくて、何故か胸が苦しくてと思っていたら持っていたおぼんをひっくり返してしまい制服が汚れてしまった。
「藍良!大丈夫か!?」
「う、うん……ごめん、後ろ行って換えの制服ないかきいてくるね!」
ヒロくんのことを気にしすぎたせいのミスだ。みっともなくて泣きたくなる。
「う、うう…………悔しいよう……」
自分の可愛さにはある程度自信があった。少なくともヒロくんよりは可愛いはずと思っていたのに。
「藍良の方が可愛いよ」
振り返ると、ヒロくんがいた。ついでに休憩入っていいと言われたそうだ。
「藍良は僕よりいつも可愛いだろ?」 
「そ、そんなの分かってるけどーーでも今回はヒロくんの方が可愛いんだって」
ああもう!悔しい!と叫ぶとヒロくんは頭を撫でてくれた。
「あんまり藍良が可愛いと僕は困るから、いつもの藍良のままがいいな」 
どうしてときくと、ひたすら唸ったままだった。こういうところもきっとヒロくんの可愛さなんだろうかと思うと少し笑えてきたのだった。



20210616




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