甘えと雨【レンアサ】VG



テツが気遣ってくれたのは有り難い話だが、この状況はどうしたものかとアサカはおろおろとしていた。
「アサカは本当に僕に甘えなくていいの?」
自分を見つめる瞳は全てを許してしまいそうになる。いやいや、でも、とレン様を崇高する自分はとんでもないと引き止める。顔が近すぎて心臓の音がもうどこまでも聞こえてしまいそうだ。
「あ、い、い、いや、ですが……」
レンの胸をそっと押した。
「わ、私にはもったいなさすぎて……。私がレン様を甘えさせるのなら全く問題ないのでそちらで許して頂けないでしょうか?」
混乱で絞るような声で答えた。限界、限界すぎるとついには足の力が入らなくてズルズルとその場にへたり込んだ。レンも同じようにしゃがんでプンプンと怒り始めた。
「それだと、僕がテツに怒られるからダメ!ね、甘えてよ」
と、レンはアサカの手を引いてそのまま抱き締めた。
「ーーッレン様!あ、あの!」
「これ嫌?」
レンは不満そうな声を出した。アサカはすぐに違います!と否定する。
「嫌じゃないですけど!私の身がもたなーー」
「僕を甘えさせるんだったら問題ないんでしょう?これなら僕も甘えられるしアサカも嬉しいよね?」
何も否定できない。アサカは観念して頷いた。身体が熱いしバクバク鳴り続けている心臓の音はもうレン様にもよく響いているだろう。
「アサカはいい匂いがしますねえー」
「そ、そうでしょうか……?」
早く離してほしいと願ってしまうのとずっとこのままでいてほしい想いが何故一気にきてしまうのかとアサカは混乱したままあることに気付いた。
自分のではない早い鼓動が伝わってきた。
「れ、レン様……?」
アサカは思い切ってレンの背中に手を回して力を入れる。すると、また鼓動が早くなった。
もしかしたらーーもしかしたら。
「あーあ。雨、止まなきゃいいのにねーー」
そんなレンの独り言が1つの可能性にさらに混乱しているアサカには届いていなかった。




20210611




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