唯一の熱【大人基緑】



※付き合ってるし同棲してる
お題「手を離さないでと祈る」



 
目を瞑って開いたら隣に眠る君がいてよかったと安堵するのは何度目だろう。どこにもいなくならない保証はない。だからつい、束縛してしまう。
前髪をそっと撫でる。太陽は上っているようで部屋は明かりをつけなくても手元くらいならよく見えた。
ずっと一緒にいてほしい。
契約だとか上下関係だとか家族だとかそういうのじゃなくて互いに互いを求めて名前のいらない二人がほしい。
緑川が側にいてくれるからオレはなんでも頑張れてこれたんだ。そうじゃなければどこかできっと折れてた。誰かが必要としてくれるオレにずっとなりたくて、そのためには沢山の積み重ねと結果がほしくて、欲しかったものは途中でいなくなったりもした。
明かりがない薄暗い部屋の中でもちゃんと見つけられる熱が今、手から伝わってくる。
幸せそうに眠る愛しい人にずっと幸せが訪れるようにと願ってしまいたくなる。もし、この部屋に流れ星が流れていたら危なかった。
「ん……ヒロト?」
撫ですぎたのか緑川がゆっくりと瞼を開けた。ごめん寝てていいよと寝ぼけた顔をした緑川に言った。
「ーーなんか願ったの?」
ドキリと心臓がはねた。エスパーなのか、それともオレたちの距離がこんなにも近いからなのか、言葉に出してたかなあと考え黙っていると、オレの頭へと手を伸ばして髪を撫でた。
「オレも願うよ……ひとりにさせない……」
眠そうな瞳が微笑んでいる。オレは思わず緑川の頭を抱き締めた。愛おしすぎて狂いそうになる。けれど、それを止めるのもお前だろう。
「わっ……ヒロト?どうしたの?」
そうだよ、オレらはずっと一緒で一人にはならない。大丈夫。星の熱はここにある。
「なんでもないよ、まだ起きるには早いからもう少し寝ようね」
そうするーといいまたすぐに眠りについた。この状態で寝てしまうんだなあとヒロトももう少し眠ろうと瞼を閉じたのだった。




20210604





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