ぬるい【創作男女】




 
小皿を取って乗せたいものを2個だけセレクトした。本当はさっさとお店で食べてしまいたいが、ご時世もあって持ち帰ることにした。
「カレーうどんの持ち帰りでお願いします」
お会計をして店を出ると別れを惜しむような夕日が真っ赤に染まって、ビルの合間に消えていった。
私は温かいカレーうどんをぶら下げて帰路へとずんずん足を進めていく。いつか誰かの歩きたかったこの道はただ寂しいだけだなあと暗くなっていく空を見上げた。
いい感じかもしれないと浮かれていた。話してみるとすごく気があって相手もよく笑っていて、いいかもしれないとお酒を飲んでいたら気付けば見知らぬ天井が見えた。私は飛び起きたらベッドから転げ落ちてズドンと鈍い音が大きく響き渡った。
ベッドの近くのソファーで寝ていた彼も飛び起き、何もしてないからといっていたが私は近くにあったバックを取ってバタバタと玄関へと走り外へ出た。
もう日は上りきっていて、アパートを後にしてショボショボと歩いた。幸いにも自宅から徒歩一分でつけるほどの距離にあったのでそのまま帰宅した。
 
 
「運命にも近いものだと思ったんだけどなあ」
思わず考えていたことが口に出てしまい慌てて口を手で塞いで周りを見渡した。よかった、誰もいない。
不思議と縁は続いて、彼と会う機会があったのだ。さっきのチェーン店のうどん屋だ。彼はそこでアルバイトをしていたのだ。
彼は自分に気付いて謝ろうとしてくれたのだが私はひたすら無視をした。自分も悪いくせにどうしたらいいか正直分からなくて困ったのだ。
だが今日行くと彼はいなかった。彼は一昨日会計の際に告げたのだ。
「オレ、引っ越すことにしました。就職が決まって……あと結婚するので。だからもう怯えないでください」
「え……あ、お、おめでとうございます」
ようやく返した言葉がそれだった。彼の顔を見るとすごく驚きながらも安堵の表情を浮かべていた。
私は泣きたかった。なんでそんなこと言ったのだろう。そんなこと言いたかったわけじゃない。
その日に食べたうどんは本当に冷たく時間が経ちすぎていて伸びまくっていた。
 
今日も自分のアパートにようやくたどり着く頃、手に持っているカレーうどんは冷めているだろうか。
10分くらいしか経っていないのだし今日は平気だろうか。
いい感じだと思っていたものは恋と呼ぶ前に自分が放置して伸び切って美味しくない。次は温かいまま食べたいなあと部屋の鍵を差したのだった。
  



20210529





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