雨上がりに歌う【ひいあい】あん☆




 
「あ、やった!雨上がってる!」
自動ドアが開き、折りたたみの傘を持って外に出ると暑そうな日光が濡れたコンクリートを眩しく照らしていた。
後ろから一彩もよかったと嬉しそうだ。
「ね、カラオケ行って時間つぶしてたら上がってラッキーだよねえー!でも本当にヒロくんは今の曲も昔の曲も知らないよね?なんか童謡も知らないみたいだし」
「故郷の歌ならいくつか知っているんだけどね……。でも何度か藍良や他の人がカラオケに連れてってくれるから何度か聴いた曲ならなんとなく歌えるし、ESにいるアイドルの曲があれば分かるものは分かるよ」
「オレたちALKALOIDの曲があればよかったんだけどね……ハア……まあ新人だし仕方ないけど」
おれがため息をつくと、そういうものなのかと一彩はまた一つ学んだようだ。
 
雨が上がって気温も上がり、湿度があるせいかすごくジメジメして汗を掻きやすい。藍良が梅雨の季節は嫌だなあと思いつつ、二人で寮へと帰っていると「あ!」といきなり一彩が足を止めた。
「んー?ヒロくんどうしたのー」
振り返ると一彩が路地裏の上空を指差しておりみてみると、ビルとビルの合間から綺麗な虹色の一部が見えた。
「このビルの屋上、階段からいけるみたいだ」
と一彩はカンカンと銀の階段を上っていった。虹がみたいのは分かるが、4階建てくらいなかろうか、このビル。
「ちょっと……勝手に上っちゃまずいんじゃ……」
と周りをキョロキョロするも通行人は自分たち以外いなかった。一彩は藍良に構わずに上っている。
「し、仕方ないか。よし!ヒロくんちょっとまってー!」
怒られたら怒られたで謝ればいいかと藍良も一彩の後を追った。

屋上につく頃にはふくらはぎが少し痛くなっていた。横にいる一彩はなんともない様子で体力の差に若干悔しく思った。しかし、息が上がらなかっただけ褒めてほしい。
「ちょーらぶーい!」
「ああ……そうだな!」
屋上に上がると先程よりも鮮明に虹を見ることが出来た。空を彩る光景に見惚れていると、一彩が歌を口ずさんだ。ESのみんなで歌える曲を英智先輩を始めとした人たちが企画して出来た歌でありカラオケにも入っている。
ワンフレーズ歌い終えると、一彩は藍良に言った。
「ここに来て良かったよ。本当に」
「……うん」
その後、二人でカンカンと金属音も気にせずに歌の続きを歌いながら階段を下りていった。


20210527





prev next








×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -