甘えさせて【奏純】ド!




距離が近いよねととある雑誌のインタビューで突っ込まれた。その時はそうですか?とか適当に誤魔化してニコニコしていたが、内心は本当に焦った。
近いかもしれないが、離れようとすると奏の方からどうしてという顔をしてオレを離れさせない。
そこで切り離せたらいいのだが、オレはその甘えた顔にどうしても弱かった。
「はーーどうしたものか……」
一人自主練しながら、ついため息が出てしまう。別に仲がいいことは悪いことじゃない。ただずっとべったりしてるのもどうだと思うし、ファンからもやりすぎは悪い印象を与えてしまうだろう。
個人の仕事が増えた今、毎回仕事が同じではないが同じ時は休憩中に身体を密着させたりオレが外で飯食べようとするとついてくる。ここんこずっとそれだ。
「純哉くんー!」
と跳ねるような声でレッスン室の扉をバタバタと駆け寄って抱きしめられた。
「お、おま!?仕事は!?」
「終わったよーー!ちゃんとしてきた!褒めて!」
「褒めてじゃないだろ!当たり前だ!」
ペチッと頭を叩いて剥がそうとするが、奏の力は強い。そして例の顔をされて、またため息をこぼした。
「最近ため息ばかりだね?どうしたの?」
「どうしたもないだろ……毎回毎回……なんでそんな距離近いんだ」
オレが睨むとキョトンとした顔で首を傾げた。それから抱きしめていた手を緩めた。
「純哉くんはオレが近いのイヤ?」
「イヤっつーかさ、節度ってものがあるだろ?なに、オマエなんかそうしい理由でもあるの?」
「ーーそれは言いたくない」
「なんだそれ」
奏はゆっくりと純哉から離れていく。とても寂しそうな顔をして。言えないとまた小さく呟いて俯いている。
「あのさ、奏」
とオレは離れていこうとする奏の腕を掴んで引っ張った。
「言えないならそれでもいいよ。たださ、人前であんまり密着するのはちょっと……。その代わり二人だけの時なら」
ああ甘い。オレは奏に甘い。こんなことを言ってしまったら目の前に一気に開花した大輪の花のような笑顔が咲いている。
「純哉くん!大好き!」
「ーーああそうかい」
抱きしめられながらも背中をポンポンと叩いた。結局、純哉だって甘えてくれる奏の方がいいんだよなあと顔がにやけてしまったのだ。
 


20210526




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