運命日/やめておけばよかったじゃん【創作BL】◆



雑誌の占い特集のページをめくって今年の運命日を知った。5月25日だった。何かあったかなあと予定を思い返すも特に予定はなくいつも通り学校があるくらいだった。
それが3月くらいの話だ。
学校から帰ってくると、母がバタバタと慌ただしく動き回っていた。
「あれ、どうしたの?」
「あれじゃないわよー!お父さんが出張先で階段から落ちて怪我したって……連絡したでしょ!?」
言われてポケットに入ってたスマートフォンをみると確かに連絡があった。マナーモードにしてたし授業終わってから確認してなかった。
「ご、ごめん……!それでお父さん一応大丈夫なの?」
「命に別条はないらしいけど、念の為お母さんは病院に行ってくるから……。今日は夕飯自分でどうにかしてね」
「うん、分かった」
じゃあ行ってくるからと母は荷物を抱えて家を出ていった。僕はリビングのソファーに座って、ゆっくりと事実を整理していく。
「今日の夜、一人なのかー」
と取り出して手に持っていたスマートフォンの画面が光った。
名前を見てびっくりしてタップしてメッセージをみる。
『今日、仕事終わりに寄ってもいいか?』
まるで知っているかのようなタイミングでの彼からのメッセージに胸がドキリとした。僕は平気とだけ返した。
シンと静まり返ったリビングで僕はカレンダーが目についた。
今日は5月25日だ。そういえば、前に見た雑誌で今日が運命日がどうとか……。
3月にその時の勢いでつい『好き』と前に彼に言ったが、嬉しいとだけ言われてフラレたのかなんなのか分からないまま春が過ぎてしまった。今まで通りの関係が続いている。結局、伝わってないのかなと思いつつもそれを訊く勇気がなかった。
もし、今日が運命日というならーー今日訊いてみてもいいかもしれない。
このままでいいと僕は思ってない。彼はもう学校という狭い世界で生きてないし、いつの間にか誰かが隣にいたとなるのも嫌だ。
カチコチと時計の音が聞こえる。僕はよし!と決めて、彼が来る前に夕飯をどうにかしようとソファーから立ち上がったのだった。



20210525



※お題「意味のある恋ってあると思う?」
幼馴染み社会人高校生 両片想い
社会人攻め ショウ
学生受け  アキラ



テーブルに置いてあったアキラのスマホの画面が光り、ちらっと見てしまった。
そこには『そいつより私の方が絶対いいでしょ』というメッセージが女の子らしき名前で表示されていた。見なければよかったとすぐに後悔した。どういう話の流れなのかも全く分からないけれど、ラブコメものの漫画を読んでいたのもあって思考が偏ってしまう。
ーーそいつってなんだ?もしかしてオレのことか?
春先に告白イベントのようなことがあったものの進展も後退もなく、以前と変わりなく過ごしている。おかしいと思っているが確かめるのが怖かった。そんな中、いつもの寄り道でアキラの顔を拝もうかと思って連絡したら、なら泊まっていったらと返されたのだ。
普通、そんな関係で泊まりに来ないかと誘うだろうか?ドキドキしながら家を訪れたら、これまたいつもどおりでアキラは風呂入っていてオレは風呂が空くのを待っている。

「あーーどういうことだよ!」
読みかけの漫画がもう頭に入ってこないので閉じて、客用の布団にバタンと倒れた。オレはアキラが好きで、でもアキラがオレにいう好きとオレの思う好きはきっと違うのだ。大事にしたい好きを壊すことは出来ない。唸っていると部屋の扉が開いた。
「……なにしてんの、ショウ」
見上げると髪を濡らしたアキラが立っていた。
「わ!?び、びっくりした……」
「ほら、風呂入る前に寝ないで早く風呂入ってきなよ。……ま、待ってるからさ」
待ってる?何をだと思いながら起き上がってアキラをよく見たらなんだかおかしい。
「ん?あ、ああ……なんだか顔赤いけどのぼせたのか?」
「ち、違う!!ちょっと風呂が熱かったの!」
「ふーん……じゃあお風呂いただくよ」
オレがドタバタと部屋を出たあとのアキラの大きなため息は耳には届かなかった。



20210610




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