きっときっと【円冬】



※FFIより数年後設定、付き合ってない





 
会おうよと震える声を抑えながら誘ったのは私だった。彼の返信は迷いもなく分かった!とスタンプつきで返事が来た。
待ちあわせ場所へと向かいながら私はウォークマンから流れてくる音楽に耳を傾けた。全楽曲シャッフルにしているから、何の曲が流れるかは分からないのが面白い。たまにイントロクイズのようにして曲名を心の中で言ってしまう。
坂道を登りながら、懐かしい曲が流れて足取りを軽くした。
ーー昔、君に声をかけたくて、でも一歩が出せなかった通学の道端。あの時はまだ自分のこの想いがなんなのか分からなかった。君のボールを熱く見つめる視線を私に向けたらどうなってしまうのだろう?きっと、きっと身体が熱くなって縮こまってしまうかもしれない。それでも高まっていく“好き”の気持ちは止まらないのだ。
 
もう少しで着くあたりでイヤホンをしていても響いてくるバシーンバシーンと重たい音が聞こえてきた。彼はもう既に着いてしまって、お決まりの特訓をしているみたいだ。
「!ーーうん、大丈夫!」
そういってブレないよう自分に言い聞かせる。
私はあの頃から気持ちを育てて大きくなった。きっときっと、届く。
イヤホンを耳からとりカバンしまって私は一歩大きく踏み出して走り出す。
「ま、マモルくん!」
振り絞って出した大きな声はもう見えている姿を捉えた。
私が大好きな笑顔で振り返ってくれる君は、今からいう気持ちを受け止めてくれるかな?と一瞬の躊躇いも綺麗に取り払ってくれる。
「…フユッペ!!」
晴れやかな太陽の下で彼は私の名前を呼んだのだった。







20210521





prev next








×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -