折れたものの破片は僕だけの宝物【風宮】





親から映画のチケットが2枚貰ったのでよかったら行きませんか?と誘われて予定もなかったので、宮坂と映画を観にきた。
映画館に来たのは久々だった。
「どういう映画なんだ?」
「吸血鬼と聖職者のお話ですよー。話題の映画!……というわけではありませんが、映画好きな人によるとなかなか良いってことでした」
ポップコーンとドリンクが入ったトレーを持ちながら宮坂は風丸の前にいる。映画のチケットを取り出そうとしているが、トレーが邪魔のようで大変そうだ。
「宮坂、持つよ」
「ありがとうございます……っとはい風丸さん!チケット!席は決まっているのでそのまま係員に渡してください」
「分かったよ、あ、いいよ。席につくまでこのまま持ってるよ。溢したら大変だし俺のドリンクもついでに入れとくからさ」
風丸がそういうとはにかんだ顔をしてありがとうございますとまたお礼を言った。
 

 
ーーーー映画は面白かった。少年の吸血鬼が同じ年頃の聖職者と出会い絆を育むが、途中で二人の関係を怪しんだ仲間の聖職者に二人で会って話しているところを見つかってしまい、吸血鬼は退治されることになってしまう。

「あそこのシーンよかったですよねー!『呪われてもそばにいるから』って仲間の聖職者に言いきって教会を出るシーン!今までの環境を捨てでも自分の信念を貫こうと思ったのカッコいいなあと」
映画を観たあとのカフェに宮坂は興奮気味に話している。風丸はそうだなと頷いて注文したケーキをフォークで割って口で頬張った。
「風丸さんもそういう信念ありますよね」
モグモグしていた口を止めて紅茶を飲んだ。
「信念?オレには……」
あっただろうか、あったとしても宮坂には言ったことがあるだろうか?
「ありますよ、フフッわからないんですか?」
そう言われてうーんと腕を組んで考え始めた。宮坂は何が面白いのか悩む風丸を眺めている。だめだ、答えが分からない。
「……わからないな。宮坂教えてくれ」
宮坂は無邪気そうな笑みを浮かべて口を開いた。
「分からなくてもいいですよ!だって、風丸さんは今でも格好いいですし!」




20210520





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